マネジメント・リーダーシップ組織開発

個人の課題はチームの課題

仕事もテキパキと行い口調も丁寧で敬語もしっかりと使っているサービス業窓口対応のAさん。
しかし、お客様からのAさんの評判はあまり芳しくありません。

一方、Aさんと比べると仕事の速さも言葉遣いも少し劣っているとマネージャーからは評価されているBさんですが、お客様からの評判はBさんの方が全然勝っています。

自分の方が仕事はできるはずなのにお客様からの評価を頂けないことに悩んだAさんから、どうしたものかとご相談をいただきました。
Aさんの話を詳しく聞いたのですが、それだけでは私には状況がよく掴めなかったため、Aさんとマネージャーの許可をもらい、その仕事の様子を見学させてもらうことにしました。

私はお客様になったわけではなく、ただ、傍らからAさんとBさんとを観察していただけなのですが、Bさんの方がお客様から評判が良い理由が5分も経たないうちにわかりました。
その理由をどうフィードバックしたものか・・・
考えた末に、Aさんのマネージャーに許可を頂き、AさんとBさんの窓口での様子をスマートフォンで動画に撮らせていただくことにして、それを後日、Aさんに見てもらいました。

最初はAさん自身のものを見てもらいました。
応対は迅速かつ丁寧だし言葉遣いも完璧です。
次にBさんのものを見てもらいました。
見始めてすぐに、Aさんは「あっ!」と小さな声を上げました。
私があれこれフィードバックしなくても、映像を見てAさんは自ら気がついたようでした。

「何が見えた?」
私がAさんに尋ねると、最初は少し困ったように口ごもっていたAさんでしたが、観念したかのように自らの振り返りを話し始めました。

「私はPC画面や書類を見ながらお客様と話をしていて、だからスピーディーに対応できているのですが・・・。Bさんは、何度もお客様のお顔を見ています。PCや書類から何度も顔を上げてお客様の方を見ている。私は・・・」

そこまで言って、Aさんはまた黙り込んでしまいました。

とにかく混雑して大変な窓口業務。
Aさんは、そのたくさんのお客様を少しでも早く、とにかくお待たせせずにという思いが強く、それがいつの間にか、PCの画面を操作しながら、書類を見ながら、お客様の方を全く見ずに手を動かしながら必要な話をして要件を終わらせ、次の方へという流れが当たり前になってしまったとのことでした。

「列に並んでようやく自分の順番になった時、お客様が嬉しいのはどっちだろう?」
私が質問するまでもなく、Aさんは分かっています。
それでも、「なるべくお待たせしない」というその気持ちは間違っているのか?との疑問がAさんにまとわりつきます。

もちろん、お待たせしないに越したことはありません。
しかし、お待たせしないためにようやく回ってきた順番で軽んじられたように感じてしまったら、とても悲しいことだと思います。
お待たせしない工夫を他に見つけることはできないものでしょうか?
同じお待たせしてしまうにしても、列の成し方とか、どれくらい待たなければいけないかを明示化するとか、そういった工夫もできるでしょう。
お客様にとっての最優先事項が「待たない」ことなのか「きちんと取り扱ってもらう」ことなのか。
両方できればベストですが、どちらか一つしか現状選べないのだとしたら、どちらなのか・・・

色々な考え方があるかと思いますが、少なくともAさんの企業では、きちんと取り扱ってもらいたいお客様の方が多いから、Bさんの方が評判が良いのではないかと考えます。

これらをAさんに伝え、現状をAさんだけの問題とせず、窓口業務全体の課題として、「より良いサービスを提供するために、自分たちはどんな工夫が必要か」をゼロベースで考えてみてはどうかと提案しました。
Aさんはすぐにマネージャーに相談し、自分の問題を窓口チームの全体の課題としてチームミーティングを開き、お客様により気持ちよく窓口をご利用いただくための業務改善の話し合いを繰り返しているとのことです。

一人の課題はチームの課題。
チームの課題はみんなの課題。
そう考えることで、より良いチーム作り、より良い仕事ができるのだと思います。

あなたは今、仕事でどんな課題を抱えていますか?
それをチームの課題としてメンバーと話し合い、課題が改善された時、チームにとってどんな良い結果が得られると思いますか?
あなたのチームのメンバーは今、どんな課題を抱えていますか?
それをチームの課題として考え、改善された時、チームにとって、そしてあなたにとって、どんな良い結果が得られると思いますか?

タイトルとURLをコピーしました