「良い会社」なのに人が来ない時代
「年収も、福利厚生も、それなりに整っている」
「昔はすぐ人が集まったのに、今はエントリーすら少ない」
そんな違和感を抱えている経営者・人事担当者は少なくありません。
それは、あなたの会社の「魅力が伝わっていない」だけかもしれません。
なぜなら今、働く人は「条件」よりも「意味」や「共感」で企業を選ぶ時代に入っているからです。
この時代に求められるのが、EVP(Employee Value Proposition:従業員価値提案)。
単なる採用ツールではなく、企業の成長戦略の土台として捉えるべき理由を、今回は明らかにしていきます。
EVPが「戦略」になった4つの環境変化
【1】少子高齢化と人手不足 採用できないのが「当たり前」に
日本の労働人口は2000年代から一貫して減少傾向です。
特に地方・中小企業では、「応募がゼロ」「人が来ても続かない」といった声が現実になっています。
これまでのように「募集を出せば集まる」時代は、もう戻りません。
企業は「自社の魅力」を言語化・可視化し、「選ばれる側」としての準備が必要です。
EVPはその第一歩です。
【2】価値観の多様化 「働く理由」は人それぞれに
「給料が高ければ来るだろう」「大手だから安心だろう」
そんな前提が崩れています。
- 副業・兼業を前提にする人
- 意義や社会貢献性を重視する人
- 人間関係を最優先する人
- ワークライフバランスを最重視する人
「この会社は何を与えてくれるのか」で就職を決める人は、今や少数派です。
「この会社で、自分は何ができるのか」「この会社で、どんな成長を遂げられるのか」と、
自分にとっての価値が企業にあるかを見極めている人が多数派となっています。
しかし、「誰にでも通用する魅力」は存在しません。
だからこそ、自社らしさを軸に「どんな人に合う会社か」を明確にする必要があります。
EVPはその軸を整理するためのツールです。
【3】従業員エンゲージメントへの注目 辞めない組織は「共感」でできている
「モノ」より「コト」、「条件」より「意味」
そんな価値観が企業内にも広がっています。
EVPが明確であるほど、従業員は「この会社で働く意味」を感じやすくなり、エンゲージメントが高まります。
結果として
- 生産性が上がる
- 離職率が下がる
- 自律的に動く社員が増える
エンゲージメント向上の「見えないレバー」として、EVPは有効です。
【4】企業ブランディングの変化 「採用広報」から「信頼構築」へ
今や求職者は、求人票よりも「会社の評判」「SNSの口コミ」「社員のリアルな声」を見ています。
つまり、企業の中身が外から透けて見える時代なのです。
魅力的なEVPを持つ企業は、
- 採用に強くなるだけでなく、
- 顧客・パートナーからも信頼を得やすくなり、
- 中長期的な企業ブランド力を築けるようになります。
EVPは「コスト」ではなく「投資」である
「EVPを設計するなんて手間がかかる」
「まずは採用数を増やす方が優先」
そう思う方もいるかもしれません。
しかし実際には、EVPが整っていない会社ほど、
- 求人のクリック率が伸びず
- 応募者の質が低く
- 採用してもすぐ辞めて
- 残った社員のモチベーションも下がる…
という「負のスパイラル」に陥りやすくなります。
EVPは、採用・定着・エンゲージメントを底上げする「戦略的投資」なのです。
EVPは「自社らしさ」を言語化するための武器
EVPとは、単なる人事施策ではありません。
「この会社で働く意味は何か?」を、企業と個人が一緒に考えるための道具です。
曖昧なままでは、伝わらない。
「良い会社なのに人が来ない」なら、それは「見えない魅力」を見える化する時期なのかもしれません。
次回予告:EVPのつくり方(前編)
第3回では、EVPをどうやって設計するか?
その前提として最も重要な「自社らしさの掘り起こし」についてお伝えします。
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