戦略人事組織開発

第1回 EVPとは何か?5つの構成要素と事例で学ぶ「従業員への価値提案」

「いい会社って、何ですか?」

「うちは年収も福利厚生も悪くないのに、なぜ人が定着しないのか?」
「求人に応募が集まらない。何をどう見せればいいのか、もう分からない」

そんな声を、これまで何社もの企業から聞いてきました。

実はその答えのヒントとなるのが、「EVP(Employee Value Proposition)」です。
EVPとは直訳すると「従業員への価値提案」。
もっとわかりやすく言えば、企業が「うちで働くと、こんな価値があります」と従業員に約束するものです。

求人票に書いてある待遇や条件だけでなく、働く「中身」そのものにフォーカスしたもの。
採用活動だけでなく、定着・エンゲージメント向上・離職防止にも直結する
「組織の魅力」を見える化するフレームワークなのです。

今日から6回シリーズで「EVPとは何か」についてお届けしていきます。
第1回 EVPとは何か?5つの構成要素と事例で学ぶ「従業員への価値提案」
第2回 なぜ今、EVPが戦略的に必要なのか?4つの環境変化と企業の勝ち筋
第3回 EVPのつくり方(前編):自社らしさの掘り起こしから始める
第4回 EVPのつくり方(後編):設計・運用・社内外への展開
第5回 形骸化するEVP:ありがちな5つの失敗パターンとその本質
第6回 未来志向のEVP:Z世代、DEI、Well-beingとどうつなげるか?

EVPとは?「従業員との『見えない契約書』」

EVPは、「自社で働くことで、従業員がどんな価値を得られるか」を言語化したものです。
企業と従業員の間に交わされる『見えない契約書』とも言える存在です。

以下のような5つの要素で構成されることが一般的です:

【1】仕事の内容(キャリア成長・意義・やりがい)

  • どんなスキルや経験が得られるか?
  • 社会的な意義やジブンゴト感を持てる仕事か?

【2】人間関係(仲間・上司・組織風土)

  • 誰と働くのか?安心して相談できるか?
  • チームで成果を喜べる文化があるか?

【3】働く環境(制度・柔軟性・安心感)

  • リモート、フレックスなど柔軟な働き方は可能か?
  • ワークライフバランスやメンタル面の支援はあるか?

【4】企業文化・パーパス(理念・価値観)

  • どんな想いで経営されているか?
  • 自分の価値観と共鳴できるミッションがあるか?

【5】報酬・待遇(給与・福利厚生)

  • 報酬だけでなく、成長支援や福利厚生なども含めて、「この会社にいてよかった」と思えるか?


事例で見るEVPの違い

◎ A社(成長志向のITベンチャー)

  • 【仕事】:20代でプロジェクト責任者を経験できる
  • 【仲間】:20〜30代中心、フラットな組織
  • 【環境】:裁量労働制、最新ツール活用
  • 【文化】:「挑戦・失敗歓迎」のカルチャー
  • 【待遇】:ストックオプションあり、評価は完全実力主義

◎ B社(地域密着の老舗メーカー)

  • 【仕事】:顧客密着型、じっくり育てる仕事
  • 【仲間】:世代を超えて助け合う職人気質
  • 【環境】:毎日定時帰り、家族との時間が確保できる
  • 【文化】:「地域に貢献する」価値観が根付いている
  • 【待遇】:安定昇給、住宅手当、社内表彰制度あり

どちらも「良い会社」ですが、価値の出し方が全く異なります。
だからこそ、EVPは「正解」ではなく、「自社らしさ」が問われるのです。

なぜEVPが必要なのか?

今や採用市場は、企業が「選ぶ」時代ではなく、「選ばれる」時代。
働く人は、自分に合う会社を「価値観」で選びはじめています。

EVPは、そのための羅針盤です。
同時に、従業員の定着・エンゲージメント・生産性向上にもつながる、戦略的人事の土台です。

次回予告:なぜ今、EVPが企業の生命線なのか?

次回は「なぜ今、EVPがここまで注目されているのか?」
少子高齢化、価値観の多様化、働き方改革
背景にある環境変化と企業がとるべき打ち手を深掘りしていきます。

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