企業の不祥事が後を絶ちません。
ニュースを賑わす不正行為の数々は、私たち消費者や取引先企業に大きな失望を与え、時としてその企業の存続さえも危うくします。
最近でも、上場を目指すスタートアップが架空の売上で粉飾決算を行ったり、有名企業の下請けいじめなどが、クローズアップされたりしています。
なぜこれほどまでに、コンプライアンスや企業倫理が声高に叫ばれる時代に、こうした問題は繰り返されるのでしょうか。
それは、企業倫理が単なる「法律を守る」という受け身の姿勢から生まれるものではないからです。
もし組織の倫理観が「法律に違反しないこと」という最低限のラインに終始しているなら、それは非常に脆弱な土台の上に成り立っていると言えます。
真の企業倫理とは、法律や規則を超えた、企業自らが「どうありたいか」という主体的な表明に他ありません。
MVVが「絵に描いた餅」になる理由
多くの企業は、立派なMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)やクレドを掲げています。
しかし、それらが現場の社員に浸透せず、まるで額縁に入った標語のようになってしまっているケースを、少なからず見てきました。
なぜ、立派な理念が組織に根付かないのでしょうか。
その答えはシンプルです。
組織の倫理観や風土は、経営者自身のあり方そのものが投影されるからです。
経営者が掲げる理念と、日々の言動や意思決定にズレが生じていれば、どんなに美しい言葉を並べても、それは社員には「建前」としてしか映りません。
たとえば、会社が「顧客第一主義」を掲げているにもかかわらず、経営者が短期的な利益を優先し、顧客を軽んじるような発言を繰り返したらどうなるでしょうか。
社員は、掲げられた理念ではなく、経営者の行動をこそ「真の規範」と見なすようになります。
結果として、MVVは意味をなさなくなり、組織全体に不信感が蔓延し、やがてはそれが不正や不祥事の温床となりかねません。
最強の倫理規範は「ブレない経営者の哲学」
真に倫理的な企業とは、法律や規制に怯えるのではなく、自らの確固たる「経営思想(哲学)」に基づいて行動する企業です。
では、「経営思想」とは具体的に何でしょうか。
それは、以下の問いに対する、経営者自身の明確な答えです。
- 「私たちは誰に、どのような価値を提供するのか?」
- 「私たちは何のために存在するのか?」
そして、最も大切なのが、 - 「私たちが大切にする価値観は何であり、何は絶対にしないのか?」
これらの問いに対する答えが、経営者の「自分軸」となります。
この軸が確立されていれば、予期せぬ事態や困難な状況に直面した際でも、倫理的ジレンマに陥ることなく、一貫した意思決定が可能になります。
たとえば、ある新技術の導入を検討する際、「効率は上がるが、顧客の個人情報保護にリスクがある」と判断したとします。
その企業が「顧客との信頼を何よりも大切にする」という揺るぎない軸を持っていれば、たとえ短期的な利益を逃しても、その技術の導入を見送るという決断ができます。
この一貫した姿勢こそが、企業の信頼性(レピュテーション)を築き上げ、最終的には他社との決定的な差別化を生むのです。
信頼を築き、未来を拓く「自分らしい倫理」
企業倫理は、外部から強制されるものではなく、経営者自身の内なる哲学から生まれるべきものです。
上場・非上場を問わず、企業の姿勢は、その商品やサービス以上に、社会からの評価に大きな影響を与えます。
そして、その評価は、社員一人ひとりの自信やモチベーションにも直結するのです。
経営者が「自分軸」を確立し、それが日々の言動や意思決定と一致していること。これが、その企業が「自分達らしく」倫理的であるということです。
貴社のMVVは、本当に生きている言葉でしょうか?
それとも、ただの飾り物になっていませんか?
今一度、ご自身の「経営思想」を深く見つめ直すことが、企業と社員、そして社会全体の信頼を築き、未来を拓く第一歩となるはずです。
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