経営層と現場管理職が定期的にミーティングを行っている企業がある。
現場からは、日々の業務で感じる課題や困りごとが共有される。
経営層が、本社マターで改善を約束したことが、なかなか進まない。
経過報告もなく、むしろ状況が悪化しているケースもある。
それでもミーティングは、何事もなかったかのように続いていく。
現場では、次第に「言ってもムダ」「どうせ変わらない」という空気が漂い始める。
管理職は、現場の声を経営に届けようとするが、動かない現実に疲弊していく。
こうした状況は、決して珍しいものではない。
対応が遅れる背景には、いくつかの構造的な要因がある。
まず、経営者が課題を認識していても、実行部隊が別に存在し、そこが動かないケース。
次に、経営者と現場で課題の優先順位が異なっていること。
経営者の視点では、現場の声が「ワガママ」に見えることもある。
しかし、それは誤解かもしれない。
時代は変わり、顧客の価値観も大きく様変わりしている。
経営者が自分たちの現場経験を基準に判断してしまうと、今の現場の実態を見誤る可能性がある。
また、管理職の声が弱く、経営判断に影響を与えるレベルに届いていないこともある。
声を上げる仕組みや支援が不足している場合、現場の課題は組織の意思決定に反映されにくい。
さらに、経営者の本気度が見えないと、現場は「どうせ放っておかれる」と感じてしまう。
これらの要因を「誰が悪い」と捉えると、組織は停滞する。
実行部隊が悪い、管理職が弱い、経営者が冷たい。
そうした個人への批判では、根本的な改善にはつながらない。
重要なのは、「何が悪いのか?」という視点で構造を見直すことだ。
たとえば、情報の流れや意思決定のプロセス、実行責任の所在を明確にすること。
現場の声を「経営資源」として扱う文化を育てること。
そして何より、「現場の改善が顧客価値に直結する」という認識を、全社で共有することが不可欠だ。
現場の声は、単なる不満ではない。
それは、顧客との接点で起きている変化の兆しであり、組織の提供価値を高めるヒントでもある。
声が上がるということは、まだ現場が諦めていない証拠だ。
その声を拾い、活かすことが、組織を生き返らせる第一歩になる。
あなたの組織では、現場の声をどう扱っているだろうか?
「誰が悪い」ではなく「何が悪い」と問い直すこと。
それが、組織を前に進める力になる。
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