中国医学の考えに「上医は未病を治す(上医治未病)」という言葉があるそうです。
上医とは優れた良い医者。未病とは未来の病気、未だ病気に至る前の状態。つまり半健康状態。健康でもないし病気でもない、その間の状態のことです。
この言葉を聞いた時、マネジメントと同じだと感じました。
成果を出し続けることができるメンバーやチームを創り出すことができる優れたマネージャーは未病、つまりメンバーやチームの「違和感」に対するアンテナ感度が高く、その違和感をそのままにせず、違和感が問題になる前に必要な対策(=治療)を行い、半健康から健康状態へ導くことができるのでしょう。
こんな話をしていたら、「俺、そういうの苦手なんだよな。空気読むとか察するとか。はっきり言ってくれればいいんだよな。」と言ったマネージャーさんがいました。
「全くもう! マネージャーやめた方がいいんじゃないの!」と言いそうになるのをグッとこらえ、違和感はどうしたら感じられるかの話し合いをしてみました。
<チームの場合>
・いつもより会話の量が少ない
・笑顔が減っている
・メールやチャットでのやり取りが増えた
・おはよう、ありがとう、お疲れ様などの挨拶が減った
・言葉の端々がぶっきらぼうだったりトゲがあったりする
・互いを否定、非難するような言葉が聞かれる
・メンバー同士の関わり合い方に偏りがある
・情報が均等に行き届いていない
・他人の成功を喜べない
・自分の失敗をオープンにできない
・マネージャーとは異なる意見、少数意見になった時にモノを言えない 等々
<メンバー個人の場合>
・表情が乏しくなった または険しくなった
・服装が乱れてきた
・口数が少なくなった
・笑顔が消えた
・他のメンバーと関わろうとしなくなった
・ホウレンソウが減った
・一人でいることが多くなった
・ミスが増えた
・ミスを隠す 等々
「これって違和感なの?」
「なんか普段と違う?」「ちょっとおかしい?」と感じる、これこそが違和感です。
ちゃんと見て、聞いて、五感をフルに使ってメンバーとチームを感じていれば、得手不得手は関係なく、感じることができるはずなのです。
「ちょっと待って。これって、全部うちのチームに当てはまるかも。それって、未病ということ???」
苦笑いするしかありません。当てはまるものがあるのなら、そのチームは未病なのです。
いえ、恐らく多くのチームは未病なのではないでしょうか。
それでも特に問題が起きているわけではないし、何よりマネージャーはとにかく忙しい。起きていない事柄にまで対処する余裕はなく、「もっとこうだったいいのにな~」と頭では分かっていても、気がつかないふりをしているのかもしれません。
最悪なのは、「いや、こんなものじゃないの」と未病状態を普通と捉え、危機感全くゼロの場合です。
「身体がだるいのは暑くて冷房の中寝ているせいじゃないの?みんなそうだから。」と何となく感じる不調をそのままにして、後になって大きな病気が潜んでいたことに大慌てする。そんな事にもなりかねないのですから。
どんなに優れた技量や能力を持っていても、健康でなければ何もできない。
これに異論を唱える人はいないと思います。
チームも同じ。全くその通りなのです。
未病状態ではなく健康でこそ、チームとそこにいるメンバーの能力が存分に発揮され、輝かしい結果を手に入れることができるのです。
上医は未病を治す。
マネージャーもまた、チームとメンバーを未病から健康へ導く上医となる努力を怠ってはいけないのです。