マネジメント・リーダーシップ誰だって変わることができる

上司からのコーチングが苦痛だった・・・ そこから学んだこと

管理職研修において、課長層の躍進のために部長にも同様の研修を受講してもらい、協力者となってもらうことは色々な企業様でよく実践されています。
インフィニティにおいても、まず部長の皆さんに受講いただき、それから本丸の課長さん達にというケースがよくあります。
受講したからと言って、部長さん達が皆、完璧になっているかというと、残念ながらそんなことは全くありません。もちろん、意識変容から行動変容へ確実に結びついている人もいますが、行動変容にはまだまだという部長さん達も大勢いらっしゃいます。いや、そちらの方が多いかもしれません。
だからこそ、研修をやりっぱなしにしないで、課長さん達が受講のタイミングを部長さん達の復習の機会と捉え、あれやこれやとプランを考えます。

先日のある企業様のプログラムでは、コーチングを学んだ課長さん達に、自分のメンバーに対してコーチングを実施してきたもらう宿題とは別に、上司からコーチングを受けてきてもらうという宿題をお出ししました。
上司である部長さんは既に受講済みですが、だからと言ってコーチングがうまくできるとは思っていません。良い復習の機会と捉え、ご自身の現状を確認してもらいたいという意図と、課長さん達には、それが上手くいくのかそうでないのか、それによってメンバーの気持ちを体験してもらい、良いお手本か、反面教師として捉えるのか、それぞれ考えてもらえればと思ってのことでした。

上司からコーチングを受けた感想を聞いている時、数人の人が口ごもりました。
どうも、「なぜなぜ攻撃」を受けてしまったようなのです。上司がどなただかを知っている私には、上司の部長さんが全く悪気はなく、一生懸命に「なぜ?」「それで?」「で、なぜ?」と質問したのだと容易に想像がつきました。
しかしその質問は、相手に関心が向いていての「なぜ?」ではなく、部長さんが聞きたいこと、言ってほしいことを「なぜ?」と言ったのだろうとも推測できました。

あ~あ、やっちゃったのね。なぜなぜ攻撃は、詰問に受け取られるとお伝えしたのに。まあ、そう簡単には癖はなおらないか・・・。
振り返りを聴きながら、私はそんな風に感じていました。

「それで、なぜなぜ攻撃を受けて、A課長はどんな風に感じたのですか?」
私がそう尋ねると、A課長はポツリと言いました。
「とても苦しかったです。課長として、部長の質問に答えられない自分がまだまだ未熟で至らないと感じました。」
あ~あ、そっちへ行っちゃったか・・・。
「質問に答えられない自分がダメだと感じたのですか?」
「はい・・・」
「では、質問に答えられる準備をして、もう一度、B部長のコーチングを受けたいと思いますか?」
「いえ・・・。とても辛くて・・・」
「そうですね。辛かったのですよね。苦しかったのは、答えられなかったことが苦しかったのですか?他に、なにか考えられる要因はありますか?どんな風に質問されたら、もっと答えやすかったと思いますか?」
A課長は、完全に自分を責めてしまっていたので、休憩時間を使ってショートコーチングを行いました。
また、全体セッションでは次のような話をしました。

何人かの人は、「なぜなぜ攻撃」を受けて、そこから色々と考えたと思います。
大切なことは、もし、皆さんがそれによって嫌な思いをしたのだとしたら、ご自身のメンバーに同様の思いをさせないよう、是非、忘れないでください。
上司の部長さんが悪気があってなぜなぜ攻撃をした人は一人もいらっしゃらないと思います。ただ、意図せずしてメンバーを苦しめてしまうことがある。これは、皆さんも全く同じです。
逆に、上司が一生懸命に話を聴いてくれたことで、アドバイスをもらったわけではないけれども、距離が近くなったと感じた人もいましたよね。これも、皆さんが何気なくしているメンバーとの会話において、メンバーが皆さんにどんな時にどんな感情を抱くかの参考になるのではないでしょうか。
真面目な人ほど自分を責め、依存傾向が強い人ほど他人のせいにしてしまいます。
宿題や経験は、自分を責めたり誰かのせいにするためのモノではなく、そこから何を学ぶか、何を気づくか、そのためのモノです。
ですから、答えられなかった自分を責める必要は全くないし、上司を責めるのも違います。
辛い思いをした人は、メンバーの気持ちを思いやることができるでしょう。上手く対応してくれた上司は模範となります。上司が悪戦苦闘していた場合でも、それを笑うのではなく、努力・奮闘する姿勢から得られるものはたくさんあるはずです。第一、学んだからといって、やり方を知っているからといって、上手くできることではないという良い証明です。皆さんも全く同じなのです。
全てが学びのきっかけとなるわけですから、落ち込む必要も相手を批判することもないのです。ですから、しっかり振り返り、それぞれの気づきや学びをつかみ取ることにのみ意識をフォーカスしてくださいね。

宿題の振り返りに1時間しか予定していていなかったのですが、2時間超の振り返りとなりました。
それでも、そこから多くのことをつかみ取ってくれたのではないかと思います。
実践を振り返り、そこから得た気づきを次に活かすことこそが何よりの成長への糧になると信じています。

どんな事も学びとなる。成功からも。失敗からも。そこに、誰が悪いとか、何が良いとかはないのです。自分がどう考え、何を得るかだけなのです。

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