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上海列車事故の教訓を忘れない

大手企業の不祥事の報が後を絶ちません。
日本が壊れていく・・・  そんな気持ちにさえなってきます。

私が就職を控えた1988年3月、高知学芸高校の修学旅行生達が乗った列車が中国は上海で脱線転覆事故を起こし、多くの生徒達が犠牲になりました。
旅行を請け負っていたのは私が就職予定のJ社。約1カ月にわたる新入社員研修の間も、事故対応への考え方や状況などを講師の先生方から聞いた覚えがあります。
その後も支店で上司や先輩から話を聞いたり、新入社員フォローアップ研修、4年目の主任研修と、事あるごとに、この上海列車事故の話題は取り上げられました。

当時、多くの犠牲が出たということで、J者にもその非難の矛先は向けられたそうです。遺族や被災家族の方からすると、やり場ないその怒りと哀しみをどこに向ければ良いのか分からなかったのでしょう。
担当の高知支店はもちろんのこと、本社、営業本部は、とにかく現地の生徒たちを無事に日本に帰国させること、不幸にも犠牲になってしまった生徒さん達のご家族への対応など、誠心誠意という言葉では足りないくらいに、とにかくできることはすべて、これでもか、というくらいに不眠不休で必死の対応をしたそうです。我が子が現地で事故に巻き込まれていたなら、犠牲にあったのが自分の子であったなら。自分が亡くなった子の親であったら。皆、そういう気持ちで応対にあたったそうです。
そこにはお金の勘定は全くありませんでした。ただ、「J社としてできることは、とにかくすべてやる。人として当たり前のことをやる。」という思いだけだったと、後に、指揮にあたった方から聞きました。

その後、事故対応が一段落して何が起こったか。
県教育委員会はじめ、学芸高校の先生や親御さんたちからのJ社対応への感謝と称賛だったそうです。
そして驚くべきは、「ここまでしてくれたJ社なら、不測の事態においても自社の損得勘定抜きに応対してくれるに違いない」と、翌年以降の高知県下の修学旅行の多くがJ社扱いになったそうなのです。
直接的責任はJ社にはないものの、学芸高校はじめ、県下の修学旅行の取り扱いは激減するだろうと会社は覚悟していたそうですが、まさかの真逆のお客様の反応に、嬉しさよりも驚きが勝り、あの時の必死の思いが別の形となって報われたことに、皆、涙したそうです。

当時、先輩はいつもいつも言っていました。
損得勘定に走るな。上海列車事故の教訓を忘れるな。お客様は必ず見ている。誠意ある行動はいつかきっと伝わる。逆に、金勘定に走った行動は、必ず墓穴を掘る。

信用第一。利よりも信。
色々な言葉で当たり前のように言われていますが、そのごくごくシンプルな「信を貴ぶ」ことを疎かにした結果が、今の崩れ行く大企業の有様なのではないでしょうか。
簡単なことほど守り抜くのは難しいのかもしれません。
しかし、「信」なくして、どうしてビジネスが、いえ、人と人との交わりが成り立つでしょうか。

今日もまた、大手企業の謝罪会見がありました。
利よりも信。利よりも信。
何があろうとも、これだけは貫き通さなければいけないのです。
経営者だけでなく、マネージャーだけでもなく、全社員が「利よりも信」の心でお客様と、世の中と向き合っていく。
我が社は愚直にそれを守っていきますし、お客様にもそこだけは決して譲ることなくお伝えし続けたいと思います。

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