「ミスが怖い」という入社2年目のYさん。
新たなことにチャレンジするどころか、それまでできていたことさえもどんどんと消極的な行動になってしまい、そのせいか、表情も暗く沈み口数少なで、先輩や他のメンバーとの会話もめっきり減ってしまいました。
困り果てた上司のSさんは、私にSOS。
SさんはYさんのミスを責め立てた覚えはないし、そもそも、Yさんは入社時からとても優秀で、目だったミスなどしたことはないのだそうです。
もともとは明るく活発で積極的に仕事に向かっていたYさん。
SさんがYさんを咎めたことがないとしても、Yさんの行動が激変してしまったことは確かです。
その原因は一体どこにあるのか・・・
Sさんから話を聞くうちに、その原因はすぐに見えてきました。
丁度1年ほど前、Sさんのグループーのメンバーで、YさんのメンターであったEさんが、グループの一番のお得意様から大クレームを頂いてしまい、その事をSさんが厳しく叱責したことがありました。
その時のことをSさん自身も「言い過ぎた」との自覚があり、後日、Eさんに対しては謝ったのですが、どうやらそれ以来、チームには
「ミスをするとSマネージャーはキレる」というノームができてしまったようです。
Sさんは、Eさんには直接謝罪をしたので、そのことは「済んだ」という理解でしたが、メンバーは違いました。
「でも、もう過ぎてしまったことだしどうしたら・・・」
落ち込んだSマネージャーに、私はこんな話をしました。
「Eさんに対しての厳しい叱責は、まさに、覆水盆に返らずです。
ですが、Eさんに対してのすぐに謝罪したことはとても良かった思います。
しかし残念ながら、意図せずにチームのみんなに「怖れ」のようなものを与えてしまった。
だとしたら、残念ながらご自身の言動でチームに恐れを作ってしまったことに対して、Şさん自身がどうするかですよね。
恐らく、若いYさんが分かりやすい形で症状が出ただけで、他のメンバーにも多かれ少なかれ何らかの影響は生じているかもしれません。
マネージャーも人間ですから、毒を出してしまうことは普通にあります。
大切なのは、その後です。
Eさんへの解毒はできても、他のメンバーへの解毒はまだです。
じわじわと広がっていく毒素ほど厄介なものはないですよね。
どうしましょうか?」
暫く考えていたSさんですが、重い口を開きました。
「みんなに恐れを与えていたことを、Eさんも含めて、メンバー皆に謝ります。
そして、そんな中でも頑張ってくれているみんなに、心からの感謝を伝えます。
これは、Yさんの問題ではなく、僕自身の問題だったんですね。」
数日後、メンバー全員に自分がチームに与えてしまった負の影響を詫び、日ごろのみんなへの感謝の気持ちを素直に口にしたSさん。
その後・・・・
少しずつですがYさんに笑顔が戻ってき始め、また、チームの雰囲気が心なしか和やかなものに変わってきたそうです。
目の前で起こっている問題の真因を突き止めた時、それは相手の問題ではなく、自分の、マネージャー自身の問題だったということはよくあることです。
そこから目を背けずにしっかりと向き合い、行動を起こしたSマネージャー。
素敵です!