ある介護福祉施設の責任者のKさんとお話していた時の事です。
「ああ、尾藤さんはそういうお仕事をされているんですね。実はうちも数年前まで、なかなか職員が定着しなくて、すぐに辞めてしまって、困っていたんですよ。それで、一生懸命研修したり、あれやこれやと対策打ったりしたんですけどね、本当にようやくなんですけど、退職がだいぶ少なくなってきたんですけどね。」
Kさんはとても静かに穏やかな口調で、介護という仕事にもっとプライドをもって働くことができる職員を増やしたいんだと語ってくれました。
実際、Kさんのところに限らず、介護福祉関係の会社では常に職員さんを募集しているところが多いようです。
その仕事のハードさや責任の重さと比べて報酬が少なく、なかなか難しいといういうことは
現実問題としてあると思います。
Kさんのところも例外ではなく、「うちも決して高くはないんですよ。」と職員給与については悩ましい問題なのだと仰っています。
Kさんの話を聴きながら、以前、介護ビジネスの世界から人材開発の世界へ転職してきた仲間の話を思い出しました。
彼女に「いやぁ、キツイでしょ?」と私が質問した時、彼女は凛とした様子で言ったのです。
「『してあげている』と思うと苦しみにも似た感じです。けれども、『させていただいている』『人生の先輩方に【老い】について教わっている』と思うと、また見方も変わってくるんです。結局、物事をどう見るかだと思うんです。」
これはマネジメントでも言えることです。
メンバーに「教えてあげている」「フォローしてあげている」と心のどこかで思っているうちはイラっときたり、カチンときたりするものですが、「自分自身の成長のチャンスをメンバーから与えてもらっている」と思うと、一転、メンバーのなんだかんだがありがたくさえも思えてくるのです。
そんなエピソードをお話しすると、Kさんは「そうなんです!」と仰いました。
「結局ね、どうモノを見るか。どう捉えるか。僕たちも、そのことだけをいつもいつも言い続けているんです。『想い』や『プライド』『信念』なんかも大切なんですけどね、それ以前に、被害者意識になってしまったり、上から目線になってしまったり、誰しも陥りがちなそんな状態の時、『どう見るか、どう捉えるか』が大切だと。ことあるごとに言っているんですよ。」
Kさんのお話に、本当にその通りと頷く私です。
研修、面談、様々なフォロー体制など、必要な事は沢山あるでしょう。
けれども、最も大切なことは、「日々」「ことあるごとに」なのだと思います。
それを「口うるさい」「また言っている」と捉えるか、そうでなく「ありがたい」と捉えるかも、モノの見方の問題ですけどね。