マネジメント・リーダーシップ人間力

マネジメントの致命的欠陥とは?

「結局、マネージャーは仕事ができるだけではダメで、人間性を磨けということでしょうか!?」

研修会場で、ある受講生が、怒りに満ちた声で私に質問をしました。

「どんなにスキルがあって仕事ができても、それだけではメンバーはついてきません。
それは上司の性別に関係なく言えることです。
非常に能力の高いほんの一握りのエリート集団なら話は別かもしれませんが、
一般的な日本の職場においては、
人間性が欠如しているマネージャーのもとで、メンバーは育たないと私は思います。

実際、私にそれが全く足りなかった頃は、
伸びたメンバーよりも、残念な結果になってしまったメンバーの方が多かった。
これは私が自ら体験済み、実証済みの明白な事実ですし、私以外の人でも同様です。
短期的結果を出すことはできても、
メンバーがリーダーを超えるような成長を遂げて
結果を出し続けることができるようになるには、
リーダーの人となりが大きく影響すると私は思います。」

自分達はこんなに頑張ってきた。
スキルを磨き、経験と実績を積み重ね、今のポジションを掴み取った。
「成果を上げろ」「スキルを磨け」と先輩や上司からお尻を叩かれることはあっても、
「人間性を磨け」だなんて誰も言わなかった。
だいたい、自分たちの上司だって、嫌な人もいた。
「なんでこの人が?」という人もいた。
それが、今、やっと自分たちの番になったというのに、
「スキルや経験、資格や実績だけでは片手落ち」と言われるだなんて。

受講生の皆さんの心の声が聞こえてきます。

「皆さんが、今以上に大きな結果、成果を出していく、
自分が持てる力以上の大きな結果をチームで出していく。
それには、メンバーや協力企業の賛同なしには成し得ません。
皆さんの大ファンになって共に行動してくれなければ困難です。

チームはリーダーの器以上にはなりません。
それは実力ではなく人としての器を意味します。
より大きな結果を出したいと願うなら、あなたの何人分にも値する結果を望むなら
実力以上に自分の器を広げる、人間性を磨く事が大切です。
器を広げる、人間性を磨くとは、あなたのファンを増やすということです。

自分のチームメンバーが、自分のファンだと思いますか?
関係先の方々はどうですか?
ファンとは本当にありがたい存在です。
いつも応援してくれる。裏切らない。成長の糧となってくれる。
ファンが多いチームや芸能人は、やはり技術や実績だけではないですよね。
そこに心があると思います。
メンバーや関係先の人たちを、一人残らず皆さんのファンになってもらうべく、
それも強力な根強いファンになってもらうべく、
皆さんの人としての魅力を発揮してみませんか。
皆さんは、『実るほど頭が下がる稲穂かな』でなくてはいけないのです。」

黙って聴いていた受講生から本音が漏れました。

「これまでとにかく『戦って勝つ』ことばかりを考えてやってきました。
自分が嫌なヤツだと思うことも何度もありましたが、
『勝つ』ためには仕方ないと自分で自分に言い訳していました。
『勝つ』ものが偉い。『勝つ』ことが全て。
私の事を悪く言う人たちは、弱者の負け惜しみだと。

自分の敵はいっぱいいると思います。
メンバーの中にも敵はいるかもしれません。
それでも、『敵を打ち負かして勝てばいい』と考えていました。
けど、苦しいです。本当はすごくしんどいです。

自分にファンは一人もいないから、
どんなに声を荒らげてもチームは前向きには動かないし、
やりたいことがなかなかできなくて、イライラが募るばかり。
本当は分かっていたんです。今のままではダメだって。

第一、私自身が今の自分のファンには到底なれっこないほどに
自分を好きではありません。」

さらに一人が呟きます。

「結局、マネージャーだろうと、経営者だろうと、政治家だろうと、
人を動かすのは人なんだから、その『人』がお粗末だとダメなんだよな。
スキルとか経験とかはメッキだもんな。ただの飾り。
高級時計とかネックレスや指輪みたいな高級宝飾品みたいなもの。
いくらでも上塗りできる。
でも、その根本、中味がすっからかんだと、話にならないんだよな。」

人としての魅力の欠如は、マネジメントの致命的欠陥です。
どんなに仕事ができても、過去の業績が素晴らしくても、
それだけに人がついてくるのではありません。
あなたが相手にするのが「人」である限り、そこに「心」が必要です。

すなわち、あなた自身を磨く、器を広げる、
それが欠けてはマネジメントは決してうまくいかないということです。

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