「できの悪い部下ですみません。」
彼は涙声で深く頭を下げました。
「何度も何度も教えてもらっているのに上手くできなくて。期待に応えられなくて。僕、向いていないんだと思います。辞めようかと・・・」
深くうつむきうなだれた彼を見て、私にも涙が溢れ、私の期待や思いが彼を追いつめ、潰してしまったことに気がつきました。
「頑張ります!」の言葉を単純に鵜呑みにしてしまい、彼の表情や口調など、細かい微妙な変化に全く気がついていませんでした。
「尾藤さんに期待されればされるほど、自分には無理だと思いながらも期待に応えなくてはと焦りが募り、自分が自分でいられなくなりました。僕は尾藤さんのコピーを目指していたわけではないのに、いつの間にかそこをゴールにしていたのかもしれません。」
既に退職の決意を固めてしまった彼を引き留める言葉は見つかりませんでした。
「私のダメだったところ、正直に教えてもらえるかなぁ。」
私の質問に、彼は笑顔で応えてくれました。
「僕を尾藤さんと同じようにしようとしたことです。尾藤さんはスゴいと心から思っているし、尊敬しています。でも、僕は僕です。よく、尾藤さん言いますよね。『もう一人自分が欲しい』って。でも、僕は僕なんです。」
ダメな上司ほど、忙しくてたまらない時に、「自分をもう一人」と思うと何かの記事で目にしました。
まるで、かつての私です。
私は私。彼らは彼ら。
自分と同じ人間を育てるのではなく、自分の苦手をフォローしてくれるような、1+1=3にも5にもなるようなチームを育てることが必要なのだと、ずっとあとになって気がつきました。
かつての私の苦い経験談でした。