人間力

言葉は心の写し鏡

昨日に続き飛行機内での出来事です。
食後の飲み物にとコーヒーをお願いしました。
熱々のコーヒーが注がれた紙コップを受けとりましたが、
機体が揺れて、膝にかけていたお気に入りのストールの上にコーヒーをこぼしてしまいました。

あっ!うわぁ!シミが・・・


私にコーヒーをサーブしてくれたCAさんも驚いて、
「大変、申し訳ございません。後ろに染み抜きがあるので直ぐに持ってきます。」
と、本当に申し訳なさそうに言いました。

「いえいえ、私の不注意ですから大丈夫ですよ。
カシミアだから市販のお薬使いたくないので大丈夫です。」


こんなやり取りをしていたその時、
通りかかったチーフパーサーが、私のストールを見てこう言ったのです。


「お客様、こぼされたのですね。」

(カチン!)あなた、何様?!(心の声)

私は自分の中から湧き出た不快感情を慌てて閉じ込めました。


別に気にするでもない何気ない言葉ですが、
お気に入りのストールにシミをつけたことに、内心、自分のバカ~と思っていた私は、
「え?こぼしたの? そそっかしいんだから」
のようなネガティブメッセージを勝手に受け取ってしまいました。


「染み抜きが後ろにあるので取ってきますね。」

「いえ、結構です。」

「すぐに取ってきますから」


私の言葉を待たずにチーフは後部へ行ってしまいました。
狭い機内で揉めるのも嫌なので、私はそれ以上は何も言いませんでした。

渡された染み抜きを受け取ったものの、やはり使う気になれず、
既に最初のCAさんが持ってきてくれていた
お湯を含んだタオルと乾いたタオルで応急措置を行いました。

殆んど目立たなくなり、あとはクリーニングに出せば大丈夫そうでした。

暫くして、再び通りかかったチーフパーサーに
「使わずにすみました。ありがとうございました。」
と、お礼を言って染み抜きをお返ししたところ
彼女は
「また使うかもしれないので、どうぞお持ちください。」
と言うのです。
そして、ストールのまだ濡れている部分をじっと見て、
「乾いたら大丈夫そうですね」
と笑顔でこちらを見て言いました。

既にひがみマインドになっている私は、
それが親切からの言葉だろうと頭では理解していても好意的に受け取ることができず、
染み抜きをお返しして、
自分の頭の中のモヤモヤを拭い去ろうと、目を閉じてひたすら深呼吸をしました。


チーフパーサーは、口調は丁寧だし、仕事ぶりも、とてもテキパキしていました。
けれども、「こぼされたのですね」の一言は私の心に突き刺さりました。
自分の不注意をわざわざ指摘されたような気持ちになったのです。
おまけに、染み抜きをいらないと言ったのは遠慮でもなんでもなく、
本当にそう思っていたのに、彼女は私の言葉を聞かずに行ってしまいました。。

私の中の価値観をスルーして、
彼女の価値観を上から押し付けられた気がしました。


尾藤さん、細かいんだからぁ!


こう言われそうです。
実際は、そんなに大した問題ではありません。
しかし、それでも私にはモヤモヤが大量発生し、
搭乗中、チーフパーサーが私の傍を通るたびに、目を伏せてしまいました。


自分では気がつかない不用意な一言


他の人なら気にもしない言葉でも、あの時の私には嫌な気持ちがしました。
そして、私の戸惑う気持ちなどお構いなしに、ルーティンの対応だったこと。

これ、普段のマネジメントでも、お客様対応でも、
全ての人との関わりにおいて共通して言えると思います。


言葉は人によって受け取りかたが違う。
同じ言葉でも状況によっても違う。
何気ない一言でも相手の心に小さなササクレを作る。
そして価値観も人によって違う。


ミスコミュニケーションを避けるには、

ひたすら自分視点ではなく、
相手をよく見て感じることが必要です。

コミュニケーションとは口先の技術ではなく、
感度を上げて心と心を通わせることです。


だから、言いたいことをただ言うのではなく、
相手への尊重を持って、目を見て、声を聞いて、表情から読み取って、五感を使って行う
ことが大切です。

かくいう私も失言は山ほどです。
その度に反省。反省。また反省。

けれども「相手への尊重」、
つまり、思いやりやいたわり、尊敬を忘れなければ、大きな失言にはなりません。

言葉は心の写し鏡

技術を学ぶのではなく、心を磨いていきたいものです。(自戒を込めて)

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