キッチンにいながらテレビの音を聞くともなく聞いていた時、番組の解説者の声を父の声と聞き間違えた時がありました。父が私に向かって何かを言ったように思ったのです。
「何? 聞こえない。」
手が離せなかったためキッチンからそのまま聞き返したのですが、返事がありません。
「何? さっき何か言った?」
すると母が言いました。「テレビの声よ。だってここにいないもの。由佳が間違えるなんて。」
この瞬間、私は子供時代にワープし、ガンダムスーツを一番最初に身にまとった頃のことを思い出しました。
母の何気ない一言。「由佳が間違えるなんて」
子供の頃も似たようなことが沢山ありました。
「こんな問題ミスするなんて、らしくない。」
「かけっこ一等賞じゃないなんて、お腹痛かったの?」
「体育が5取れなかったなんて、パパもママも運動選手だったのに、実技テスト失敗したの?」
期待に応えられていない、できないコトが許されない、さもないと認められないと子供心が勝手に思い、ガンダムスーツを着込んで突っ張っるようになってしまったのです。
「由佳が声聞き間違えるなんて。音の聞き分けは抜群にいいはずなのに。」
そう言う母に、今回はこう言いました。
「間違えちゃった? えへへ。私の耳もたいしたことないね~」
親や上司の何気ない一言。発する方は本当に何の悪気もなく、逆に期待や励ましを込めて言っているかもしれません。しかし、私にはすごくキツカッタということが、この歳になってしみじみと感じるのです。
そう言えば、その昔、「そんな言い方、Kさんらしくないよ。」と何気なく言った私に、猛反発したメンバーちゃんがいました。
日常のちょっとした会話、言葉遣い。それが原因でメンバーがガンダムスーツを着込んでしまう原因をマネージャーが気づかずに作ってしまっているとしたら、そんな残念なことはありません。だからと言って臆病になる必要はありませんが、時折、自分の発する言葉や表現方法を振り返り、自らがガンダムスーツ生産拠点になっていないかを確認してみるのも大切だと思うのでした。