マネジメント・リーダーシップ

ブレたってかまわない

「手に入れたいモノは何ですか?」と研修冒頭に質問すると、必ずお一人やお二人は「マネージャーとしてブレない軸を見つけたい」「ブレない人間になるための秘訣を知りたい」という答えが返ってきます。

巷でよく聞く「ブレる」「ブレない」というこの表現。若かりし頃はあまり聞いた覚えがありません。

もしかしたら近年になって「ブレる」人が多く見受けられるようになったので、こういう表現が流行ってしまったのでしょうか。

 

若い頃の私の上司Mさんは、方針転換をよくする人でした。方針転換と言っても目標を変えるのではなく、戦い方(戦術)を変えるのです。A作戦でいこうと決めても、うまく行きそうもないと状況判断したり、相手やこちらの事情が変わることでB作戦やC作戦に変更するのです。なぜAからBやCへ変えるのかの説明がなされるので、「課長はブレる」などと言うメンバーは一人もいませんでした。

ある頃一緒に仕事をした上司Sさんは、目指す方向(目的)への自分の想いをとても強く持っていた人でした。X作戦への思い入れがとても強く、また、効果的であったため、しばらくの間はX作戦偏重気味のところがありましたが、作戦変更の時期に来た時にはY作戦やZ作戦への変更を指示しました。しかし、X作戦が効果的でないことは私たちメンバーにも理解はできましたが、なぜYなのか、なぜZなのか、という説明がなされず、私たちは分からない中で戦術の変更を余儀なくされました。おまけに、本当は目指す方向は変わらず元と全く同じはずなのに、作戦変更と共に目的に対する表現が変わるため、メンバーから見ると、目的も変わってしまったように受け取られました。

「ブレブレだよね。上司がこれじゃあ、私たちはやっていけないよね」

こんなひそひそ話があちらこちらで聞こえたりもしました。

 

MさんもSさんも、私から見たら決してブレていたわけではなく、終始一貫して同じ目的を追求していました。

しかし、Mさんはブレていると誰も思わず、Sさんは多くのメンバーがブレていると感じたのです。

 

二人の違いは、戦略戦術の変更について、メンバーが理解納得できるように説明したかどうかというコト。そして、当初掲げた目的・目標の表現の仕方を変えたかどうかと言うコトです。

つまりは伝え方のテクニックが、Sさんの方が、メンバーに対して少し分かりづらかったのかなと思います。

 

人としての「あり方」はブレるべきではありません。しかしそれ以外のモノは、目指す目的や使命であっても、場合によっては変わって良いと思います。

 

何がどうなるか全くわからない時代です。昨日のシロが今日はクロになるかもしれない。昨日の正解が今日は不正解になる世の中なのです。まさに時は乱世。ブレない方がおかしいのです。

「Aと決めたんだから何が何でもAでやり通すんだ!」というのは、終始一貫でもブレないのでもなく、ただ何も考えていない愚かな行為です。

ブレるという表現が好ましくないなら、柳のようにしなやかに、柔軟に、そして強くあれば良いのです。

ただ、リーダーが何か「変更」を行った時、そこに対して丁寧に丁寧に説明をしてメンバーの理解納得を得られなければ、「リーダー、ホント、ブレてばっかりだよね。」と信を失ってしまいます。そこだけはくれぐれも注意をしなければいけません。

ブレたっていいんです。人としてのあり方、生き方以外は、大いにブレて構わないのです。

 

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