かつて、“パワハラ気味”と囁かれていた管理職がいた。
今では、プライム上場企業の役員となり、周囲の信頼を集める存在になっている。
でも、そこに至るまでには、本人の努力と、彼を信じて動いた人事担当者、そして“対話の時間”があった。
チームのエンゲージメントが極端に低い、という相談を受けて、私はその組織に入った。
最初の関わりはヒアリング。
チームのメンバーと一人ひとり対話していくと、
「厳しい言い方をされる」「相談しづらい」「怒られるのが怖い」──
そうした“パワハラの芽”が、そこかしこに見えてきた。
でも、本人はその自覚がなかった。
むしろ、メンタルが落ち込み、自分をどう立て直せばいいのか悩んでいた。
「自分のモチベーションが上がらないから、チームも仕方ない」と、
どこか諦めたような空気をまとっていた。
私は彼のコーチングを担当した。
しかし、パワハラの件には触れなかった。
それよりも、「どうありたいのか」「どんな自分に戻りたいのか」に集中した。
彼はまるで“重たいガンダムスーツ”を着込んだように、
本来の自分とは違う姿で組織に立っていた。
そのスーツを一枚ずつ脱ぐような作業を、私たちは静かに続けた。
同時に、私は人事担当者と連携した。
「彼を責めるのではなく、彼が“パワハラ的にふるまってしまう背景”があるのでは?」
そうした視点を共有したところ、人事の方は真摯に耳を傾けてくれた。
「彼はもともと優しく、まじめな人。きっと“ならざるを得ない”理由があるんです」
そう言って、環境の改善に全力で動いてくれた。
3か月後、彼とチームメンバー4名とのグループコーチングを実施した。
そこで彼は、はじめて彼らの本音を聞いた。
「自分は、彼らのことを何も知らず、知ろうともしてこなかった」
そう気づいてから、彼の言動は少しずつ変わってきた。
人事担当者も、彼のバックアップに陰になり日向になり動いていた。
有望な人材を、組織診断の結果だけでレッテルを貼って埋もれさせたくないという想いが
私にはひしひしと伝わってきた。
環境が整い、彼は“自分らしさ”を取り戻していった。
少しずつ、チームの空気が変わった。
やがて彼は、自分がより力を発揮できる部署に異動し、
その後、役員に昇進した。
私は人を「変えよう」とは思っていない。
ただ、その人が“自分らしくいられる状態”を一緒に整えていく。
それが、私の仕事だと思っている。
もし今、あなたのそばに──
「本当はもっと輝ける人」がいるなら。
「この人の力を、信じて支えたい」と思う誰かがいるなら。
そっと、お話を聞かせてください。
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