誰だって変わることができる

部下が前を向いたのは、マネージャーが変わったから──人が変わる瞬間に立ち会える仕事

パソコンを開いてメールチェックをしていた時、嬉しいご報告が舞い込んだ。
そのメッセージには、こんなことが書かれていた。

「最初は泣いていたけど、いまは『チャレンジしてみようと思います』って言ってくれて。
不安もあるけど、ちゃんと前を向いています。」

この言葉の送り主は、私がコーチングで関わっていたマネージャーの「まりこさん」(仮名)。
彼女の部下である「せいこさん」(仮名)は、
希望しない地位への海外赴任の話を受けて戸惑っていた。
さらに、まりこさんの退職というダブルパンチで混乱していた中、
まりこさんがしっかりと向き合い、伝え、支えた結果の言葉だった。

最初の頃のまりこさんは、せいこさんの「今時感覚」と「自由奔放さ」に戸惑っていた。
「何を言えば伝わるんだろう」
「私が余計なプレッシャーをかけているのかもしれない」
そんなふうに、言葉にできない不安をたくさん抱えていた。

でも私は、アドバイスはしない。
「こう言えばいい」とか、「こうすれば動くよ」という言葉も、あえて口にしない。

私がするのは、その人の“今の想い”をていねいにすくいあげて、
“本当に伝えたいこと”に、本人自身が気づくのをそばで待つこと。
そして、ちょっとだけ背中を押すこと。

あるセッションの中で、まりこさんは言った。

「ちゃんと自分の想いを伝えようと思います。
せいこさんには頑張ってほしいし、彼女の成長を本当に応援しているから。」

その後、まりこさんは彼女なりの言葉で、せいこさんに想いを伝えた。

最初は、あまり響かないことも多かったようだ。

それでも少しずつ変化が現れ始めた。
せいこさんを“信じてくれる人の存在”があったからか、
辞めるとまで口にしていたせいこさんは、
「海外に行ってみようと思う」と、前を向くことができたようだ。

私が何かを変えたわけじゃない。
まりこさんが、自分で変わった。
その変化が、部下であるせいこさんにも届いた。

「人を変える」ことは、できない。
でも、「変わろうとしている人を、信じて待つ」ことは、できる。
そして、その“待つ姿勢”が、誰かの心を動かすこともある。

部下が変わった。
それはマネージャーの成長があったからこそ。
そしてそのマネージャーも、ひとりで変われたわけじゃない。

人は、ひとりじゃなかなか変われない。
だけど、自分をちゃんと見ていてくれる人がいると、不思議と前を向けたりする。
そんな“信じて待ってくれる存在”が、変化のスイッチになる。

私は、「支えた人が、誰かを支えられるようになる」そんな循環を見たいと思ってる。
今回のように、
私 → まりこさん → せいこさん
という変化のリレーが起きると、
「あぁ、本当に良かった。管理職 バンザイ!」と心から思う。

変わることに時間がかかってもいい。
でも、自分の意志で一歩を踏み出したその瞬間から、人はちゃんと変わりはじめる。

そしてその変化は、静かに、しかし確実に、周りの誰かに伝わっていく。
そんな場面に立ち会えること。
それが、私にとってこの仕事の、いちばんの報酬なのかもしれない。

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