組織開発経営幹部育成

現場改革を成功させる5つのマネジメント視点

TOM(Technology and Operations Management)の授業で、
「現場改革のマネジメント」をテーマに考える機会があった。
自分の実務と照らし合わせながら、あらためて感じたことを整理してみた。

現場の改革をするためのマネジメントにおいては、
「短期⇔長期」「現場⇔全社」「確実⇔不確実」の3つの軸で問題を切り分け、
それぞれに適したアプローチ設計をすることが不可欠である。
またその際には、「誰(どこ)が悪い」という犯人捜しの視点ではなく、
組織をひとつの「システム」としてとらえ、
システムを最適化するためには何が必要か、という、システム思考が必要である。

1.3軸で問題を切り分ける視点

①時間軸:短期対応と中長期視点のバランス
短期的な課題解決(問題対応・業務改善)だけに集中すると、
構造的課題の先送りや部分最適に陥るリスクがある。
一方で、長期的な視点(標準化、仕組み化、育成、風土当)だけに偏ると、
現場のモチベーションや即効性が損なわれるリスクもある。
したがって、現場改革は、短期と中長期の両方の視野で施策を構築する必要がある。

②空間軸:現場と本社・全社視点の接続
現場の問題は、実は本社の制度やルール、文化の影響を受けていることが多く、
現場単独で解決することが難しいものが多くある。
一方で、現場の知見や工夫を生かさずに本社主導でコントロールしすぎると、
形骸化や反発を生む。
現場と全社をつなぐ視点を持ち、相互に作用する仕組みを設計することが大切である。

③確実性軸:不確実性への対応姿勢
不確実な状況においても、思考錯誤を通じて学習と創発を促すことが、現場改革の本質である。
確実な改善だけに取り組むのではなく、
明確な正解が見えない中でも、小さく試し、反応を見て、柔軟に修正するマネジメントが必要である。
一方で、標準化、数値化、再現性の確保も並行して行うことで、
組織としての再現性と進化性のバランスが保たれる。

2.トップダウンとボトムアップの両輪の重要性

現場改革の推進において、トップダウン(戦略的意思決定、目標・方針・予算等リソース支援)と
ボトムアップ(創発・改善・試行錯誤)の両輪が噛み合って初めて、組織に変化が定着する。
変革の推進(号令)は、トップが発するべきである。
しかし、実行とそれらに伴う改善はボトムアップで行われるのが望ましい。
トップがすべきことは、現場の声を無視して一方的に答えを出すことではない。
むしろ「現場で何が起きているか」に謙虚に耳を傾け、現場が動ける環境を整備することにある。
現場に権限を委譲しながらも、戦略や方向性と理念・ビジョンを明確に示し、
対話と支援を通じて一体感を生み出す姿勢が求められる。

また、リーダー自身が過去の成功体験にとらわれ、
「自分が一番わかっている」という姿勢になればなるほど、現場の創発性は失われていく。
特に経験豊富な管理職ほど、任せる勇気と聴く姿勢が試される。

3.不確実性を味方につけるマネジメント

現場での改善や創発的行動は、
そもそも「明確な正解が存在しない」または「正解がわからない」状況で生まれる。
不確実な環境の中で、最小のリスクで試行錯誤を行い、変化の兆しを迅速にキャッチし、
そこから戦略を柔軟に調整していくことが、マネジメントの要点である。

この際、以下のような認識が必要となる。
・先行的な市場形成や改革はギャンブルであることを前提に、慎重なアクション設計が必要
・選択的に予見できる未来に対しては、見通しとスピード感を両立させる
・変化をいち早く捉える力を重視し、情報感度の高い現場づくりが重要

4.現場を起点とした知の構造化

現場改革は、属人的な頑張りに頼るのではなく、組織的な知識構造へと昇華させる必要がある。
すなわち、以下のような仕組みの循環をつくる。

・現場の実践知(Art):柔軟性・分権・現場判断・実践学習を尊重し、創発を促す
・仕組み化された知(Science):原則性・制度・システムにより成果を定着させる

この二つをうまく行き来する動的マネジメントが、複雑な環境下での現場改革には不可欠である。

5.システム思考による課題発見と対策の実行

改革を行なわなければならない状況の時、
起こっている事象(問題)に目が行き、その真因にたどり着かないまま、
「もぐらたたき的」対策に終始してしまう場合がある。
また、事象に対して犯人捜しをして対策を打ってしまい、組織というシステムが、
互いに様々な影響を与え合って現在の状況に至っているという視点が欠けてしまう場合もある。
マネジメントに必要なのは、「何・誰が悪い」ではなく、
システムに支障を与えているコトは何かという、真因を追求する目と考え方が必要不可欠である。

現場改革を成功させるマネジメントとは、単に現場の改善を命じることではなく、
「組織全体の視点」と「現場の創発的知恵」をつなぐ戦略的な営みである。
トップダウンとボトムアップのバランスを取り、
不確実性を許容しながら前進する文化を育てること。
それが、持続可能な現場改革を実現するカギである。

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