戦略やビジョンがなかなか社員に伝わらない。
理念が浸透しない。
これはもしかしたら、単に結末やTo Doだけを話しており、そこにストーリーがないからかもしれません。
ストーリーとは物語です。戦略もビジョンも、もちろん理念も、すべてはストーリーで語らなくてはいけません。リーダーはストリーテリングができなくてはならないのです。
目標は売上10億円達成!
これに大いなる魅力を感じ、心動かされて何が何でも頑張ろう! と思える人は、そう多くはいないと思います。
売上10億円は何か(目的)を手に入れるための単なるKPI=目標(What)です。何を成そうとしているのか、何を手に入れようとしているのか。それが成されるとどんな素敵で幸せなことが起こるのか。それを成し得るためには様々な行動を起こさなくてはならず、その行動結果の指標(KPI)として、10億円という一つの目標がある。目的(Why)と戦略(How)があり、初めて10億円という目標(What)が生まれるのです。
10億円(What)ばかりを語っても、人の心は動きません。人の行動を促したければ、人の心を動かすことです。心が動くことで、「誰かの目標」「やらされ目標」ではなく、「自分の目標」「やりたい目標」に変わっていきます。
目的(Why)を丁寧に語ることで、それを魅力的と感じた人たちは、話にどんどん惹きつけられます。Whyに意義や意味を感じたからこそ、戦略(How)に興味関心を持ち、そこへの共感納得があって、目標(What)への意欲につながるのです。
Whatだけを一生懸命伝えるのは論外。What~How~Whyの順番で伝えるのも間違いです。
最初にWhyを語り、目的が達成された理想の世界を具体的にイメージできることで、そこへたどり着きたいんだと感じてもらうことが何より必要です。Why~How~Whatと一連のストーリーを持って語られることで、イメージする→共感する→心が動く→ジブンゴトとなる→行動促進という流れを作ることができるのです。
キング牧師は「人種差別廃絶運動しよう!」とWhatで人々に訴えたのではなく、「I have a Dream.」から始まる演説で、人種差別が撤廃された後のイメージを人々に描いてもらい、それが大きな共感と感動を呼んで、アメリカ全土にわたる公民権運動となったのはあまりにも有名な話です。
もし、「人種差別は良くない。公民権運動を起こすからみんな協力してほしい。」とWhatだけを語っていたら、おそらく議会をも動かす運動には発展しなかったと思います。
私には夢がある。それは、いつの日か、ジョージア州の赤土の丘で、かつての奴隷の息子たちとかつての奴隷所有者の息子たちが、兄弟として同じテーブルにつくという夢である。
私には夢がある。それは、いつの日か、私の4人の幼い子どもたちが、肌の色によってではなく、人格そのものによって評価される国に住むという夢である。
私には夢がある。それは、邪悪な人種差別主義者たちのいる、州権優位や連邦法実施拒否を主張する州知事のいるアラバマ州でさえも、いつの日か、そのアラバマでさえ、黒人の少年少女が白人の少年少女と兄弟姉妹として手をつなげるようになるという夢である。
私には夢がある。それは、いつの日か、あらゆる谷が高められ、あらゆる丘と山は低められ、でこぼこした所は平らにならされ、曲がった道がまっすぐにされ、そして神の栄光が啓示され、生きとし生けるものがその栄光を共に見ることになるという夢である。
(American Center WEB サイトより抜粋)
今春、日本中を熱狂の渦に巻き込んだWBC。栗山監督はじめ選手たちの目標は優勝・世界一でしたが、その目的は「子供たちの野球離れを食い止めたい」、そのためには「自分たちが憧れの存在になる」でした。厳しいスケジュール調整や体調管理のもと、選手たちが自分を差し置いてチームのために全身全霊で頑張れたのは、目的Whyへの強い共感があったからに他ならないと考えます。
戦略も、ビジョンや理念も、Whyから始まるストーリーによって、メンバーの行動を全く異なる前向きなものに変えることが可能です。
リーダーは、Whyから始まるストリーテリングを身につけることで、メンバーのやる気を十分に引き出し、主体的行動を引き出すことができるのです。