「2・6・2の法則」という考え方が、私は好きではない。
有望な人材が引く手あまたの組織であったなら、この考え方はアリかもしれない。
しかし、採用に課題を抱えている企業の方が現実には多く、特に、中小企業ではその割合がとても多い。
かつて、甲子園を一世風靡した学校に、徳島県立池田高等学校があった。
甲子園で春夏合わせて3度の優勝と2度の準優勝を果たした名門校だ。
この池田高校がセンバツで初めて準優勝した時、部員はわずか11人しかいなかった。
地元県内の生徒ばかりだ。
野球留学で優秀な逸材を集めて戦う名門私立学校を相手に、池田高校は、まさに「全員野球」で勝ち続け、「やまびこ打線」の名が全国に知れ渡った。
特別な実力や才能を持つエリート集団ではなく、ごく普通の野球少年たちが、自分達が持てる実力を100%出し切った。
しかしそれは、個々人が持てる力を100%出し切る5+5=25の足し算ではなく、選手同士が互いの強みを引き出し、弱みを補い合うことで、5×5=25となる掛け算のように、相乗効果を発揮したのだろう。
これにより、実力プラスαの結果を手に入れることができたのだと思う。
一般企業でも同じだ。
「うちの社員は普通の子たちだから」と諦めないでほしい。
全員が持てる力を100%出し切ることで、その成果は、今の何倍にもなるだろう。
ポテンシャル100ある人でも、やる気やエンゲージメントの低下により60しか実力を発揮しなければ、もったいない話だ。
逆に、ポテンシャルは70しかないが、70すべてを出し切ることができれば。それら掛け算が大きな成果を生む。
能力や実力をいきなり上げることは難しい。時間がかかるし、限界もあるだろう。
これが2・6・2の法則が語られる所以だ。
しかし、やる気やエンゲージメントは、適切なアプローチや組織風土の変革によって、すぐにでも上げることが可能だ。
育成に時間はかかるが、今ある実力をフルに発揮してもらうなら、即効性を期待できるわけだ。
世の中、採用ブームである。
少しでも良い人材を。即戦力を。と目線はそちらに向いている。
しかし、今一度、よく考えてみてほしい。
あなたの組織にいる人たちは、全員が「持てる力」を100%発揮できているだろうか?
もし、そうでないなら、採用を否定するわけではないが、
当時の池田高校がそうだったように、全員が100%の力を出し切る総力戦を検討してみるほうが、早道ではないだろうか。
そんな組織作りをしたいと願う経営者の皆さんの見方でありたいと、私は考えている。
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