困難に直面している部下を助けているつもりで、実は部下の成長を阻害してしまう上司の行動があります。多くの上司が良かれと思ってその行動を取り、部下はその時は喜ぶかもしれませんが、それらは部下の成長を手助けする行動とは真逆の、部下を潰している行動かもしれません。
「金を残すは下、仕事を残すは中、人を残すが上」とは後藤新平の言葉ですが、この表現を真似て部下育成について言うならば、「仕事を手伝うは下、やり方や考え方を教えるは中、信じて任せるが上」だと考えます。
急場しのぎであれば、直接手伝う、またはできる人をあてがい、難局を乗り越えれば良いでしょう。しかしそれはただ山を乗り越えたにすぎません。
上司が行うべきは、手伝うのでもできる人をあてがうのでもなく、乗り越えるための考え方や行動のヒントを伝え、部下の自立を信じて見守ることです。それが部下の成長のために上司が取るべき行動であり、上司の直接介入や間接介入(できる人・手伝える人をあてがうこと)は、上司部下双方にとって最も安易な方法であり、短絡的下の手段であると理解しなければなりません。
人は失敗をした時が一番多くを学び、成長に繋がると言われます。失敗が許容できる場面であれば、失敗を見守る度量も上司には必要です。
部下を育てることが上手な上司は、「忍耐強く待つ」「温かく見守る」「可能性を信じる」ことができる人であり、それはすなわち、人としての懐の深さ=器の大きさに依るところが大です。逆に言えば、器がちっぽけな上司のもとでは部下は育ちづらいということで、部下の成長が思わしくないのは、上司のあなたの器が影響している可能性大ということです。
部下の成長を願う時、どの手段を採るかは時と場合、部下の状態にもよりますが、いずれにしても、上司のあなたの「器の大きさ」があなたの選択や行動結果に影響を及ぼし、それらが部下を後押しすることもあれば、そうでない場合もあることを決して忘れてはいけません。