マネジメント・リーダーシップ

「手段の目的化」が組織を破壊する:リーダー育成と対話で防ぐ方法

「できない」なんて一言も言っていないのに、なぜか「いつもお前はできないとばかり言う」と上司に叱られた。

誰もが一生懸命に取り組んでいるのに、こうした「すれ違い」が日常的に発生している組織は少なくありません。

現場では「お客様へのサービス改善」という目的で指示された取り組みが、実行プロセスに入った途端に「その取り組みを完結させること」そのものが目的になってしまう。
そして、少しでも難易度が高まると「無理だ!」という反論で止まってしまう。

そこで、上司は「サービス改善なんて無理と言っているのか」と誤解する。

このすれ違いの根源は、「目的思考」と「手段思考」の混同にあります。

手段が目的化した組織で起きる、深刻な弊害

現場の担当者が優秀で、一生懸命であるほど、「手段思考」の落とし穴に陥りがちです。
なぜなら、手段を極めることは目の前のタスクを確実に完遂できるという安心感を与えるからです。

しかし、これが組織全体に蔓延すると、以下の弊害が発生し、組織開発の大きな壁となります。

  1. 創造性の停止(イノベーションの阻害):
    • 「そのやり方(手段)は無理」という反論で思考が停止し、「目的達成のための他の手段」を探そうとしなくなります。
  2. エンゲージメントの低下:
    • 上司は「目的を否定された」と感じ、部下は「やり方を否定された」と感じる。
      お互いが不満を抱え、信頼関係が損なわれます。
  3. 戦略との断絶(全体最適の崩壊):
    • 日々の煩雑なタスクに追われ、本来の「全社のため」「お客様のため」「世の中のため」という上位の目的が見えなくなり、全体最適に向けた行動が取れなくなります。

目的を呼び覚ます「対話と質問」の力

この問題を解決し、「目的思考」で動ける強いリーダーを育成するには、特別なスキルではなく、対話における「軸」が必要です。

部下が「取り組みは無理!」と発言した時、上司はつい「じゃあ、何だったらできる?」と手段の継続を促す質問をしがちです。
しかし、本来行うべき質問は、目的を思い出させるものです。

■ 誤解を生む質問(手段思考的問いかけ)
・「じゃあ、代わりの手段は?」
・「何だったら可能なんだ?」
・「このタスクを諦めるのか?」

■ 目的を思い出させる質問(目的思考的問いかけ)
・「(目的である)お客様のサービス改善のために、この取り組みで何を実現したかったんだっけ?」
・「そもそも、このタスクは誰のため、何のために存在しているんだっけ?」

このような質問を投げかけることで、部下は手段から一旦離れ、本来の目的に立ち戻り、「この目的のためなら、別の手段がある!」という主体的な解決策を考えられるようになります。

目的思考を組織のDNAにするために

手段と目的を正しく使い分け、組織のメンバー全員が「何のために、その仕事をしているのか」を深く理解し合える環境づくりは、企業の持続的な成長に不可欠です。

「つい手段に囚われがちなリーダーが多い」
「コミュニケーションのすれ違いで組織の活力が落ちている」
これらの課題がある組織は、手段志向に陥り、本来の目的とは異なる方向に組織が進んでいる可能性があります。
組織の目的が埋もれてしまわないよう、対話の文化をどのように醸成していくかが、今、リーダーに問われています。

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