管理職や経営者の方からよく聞く悩みに、「ちゃんと言っているのに、反応が薄い」というものがあります。
実は、承認や感謝の言葉には届く時と届かない時があります。
問題は、言葉そのものよりも、どう伝えているかにあります。
なぜ「ありがとう」「すごいね」だけでは伝わらないのか
「ありがとう」「すごいね」は前向きな言葉です。
しかし、そのままだと相手には曖昧で、価値が伝わりません。
- 何を見てそう思ったのか
- どこが良かったのか
が分からないため、誰にでも言える、軽い言葉と受け取られてしまうことがあります。
抽象的な言葉は、好意としては受け取れても、相手の心には深く届きません。
効果的な承認・感謝の鍵は”具体性”
承認や感謝が本当に力を持つのは、「何が」「どこが」を添えて伝えた時です。
例えば:
- 「忙しい中、時間を割いて助けてくれてありがとう」
- 「毎日欠かさず続けていて、頑張ってるね」
- 「短時間なのにここまで整えたのは本当にすごいね」
これらの言葉には、「あなたをちゃんと見ている・見守っている」 という温かいメッセージが自然と含まれます。
具体性は、ただの「褒め言葉」や「感謝」を信頼につながるコミュニケーションへと変えます。
具体的に伝えると何が起こるのか
具体的な承認・感謝を受け取った相手は、「自分は大切にされている」 「見てくれている人がいる」と感じ、安心します。
これは、
- 心理的安全性の向上
- 行動量の増加
- 自律的な働き方の促進
- チームの信頼関係構築
につながります。
承認は”管理の手段”ではありません。
人を大切にし、信頼を育てるための行為です。
現場で実際に起こっていること
私のクライアントの大部分で、リーダーが伝え方を変えただけで、次のような変化が起こっています。
- メンバーが進んで相談に来るようになった
- 新しい挑戦をしたいと申し出るようになった
- 会議での発言が増え、建設的な議論ができるようになった
- 離職の相談が減り、定着率が向上した
これらは、心理的安全性が高まり、信頼関係が強くなった証です。
数値で示すことは難しいコミュニケーションの領域ですが、現場では確かに、人が変わり、チームが変わる瞬間が訪れています。
「見守る」ことは、リーダーの義務であり責任である
「忙しいから」と、メンバーへの承認や声かけを後回しにしていませんか。
しかし、メンバーは機械ではなく、人です。
人を「見守る」ことは、マネジメントの原点であり、忙しくても欠かしてはならないリーダーの大切な仕事です。
ある意味、それは義務であり、責任です。
より深く「届く」承認のために
具体性を高めるだけでなく、次の視点を加えると、承認はさらに力を持ちます。
(1) プロセスを承認する
結果だけでなく、「そこに至るまでの努力」「工夫」「姿勢」を見て伝える。
これが、次の挑戦を後押しします。
(2) 相手の価値観に沿って伝える
ある人は「成長」を、ある人は「貢献」を、ある人は「安定」を大切にしています。
その人が何を大事にしているかを知り、その文脈で承認しましょう。
(3) 一対一の場を大切にする
公の場での承認も大切ですが、1on1などの個別の時間でじっくり伝えることで、より深く届きます。
(4) 失敗や課題にも向き合う
承認は、褒めることではありません。
「ここは難しかったね。それでも諦めずにやり切ったのは大きい」と、困難の中にある価値を言語化することも、大切な承認です。
よくある「届かない承認」の落とし穴
逆に、こんな承認は相手に届きにくいので注意が必要です。
| NG例 | なぜ届かないか | 改善例 |
|---|---|---|
| 「いつも頑張ってるね」 | 何をどう頑張っているのか不明 | 「毎朝一番に出社して準備してくれてるね。おかげで朝がスムーズだよ」 |
| 「さすがだね」 | 何がさすがなのか分からない | 「短時間であの複雑な資料をまとめたのはさすがだね」 |
| 「ありがとう」(だけ) | 何に対する感謝か曖昧 | 「急な依頼だったのに、すぐ対応してくれてありがとう」 |
| 「みんな頑張ってるね」 | 個別性がなく、自分事に感じられない | 一人ひとりに具体的に伝える |
同じ言うなら「正しく」伝える
承認や感謝は、組織を強くする重要な技術です。
ただ言えばいいわけではありません。
- 「何が」「どこが」を添える
- その背景には”ちゃんと見ている・見守っている”姿勢がある
- それが信頼と、次の行動を生み出す
だからこそ、同じ言うなら「正しく」伝える。
これが、強いチームを創っていくリーダーのコミュニケーションのあり方です。
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