マネジメント・リーダーシップ組織開発

共通の敵は共通のゴール

「共通の敵がいる時は協力できるんですけど、そうでない時は、ホント、扱いづらいというか、面倒なメンバーなんですよ・・・」

チームのエースTさんに手を焼いていると困り顔のマネージャーKさんのボヤキです。

「共通の敵?」
私が質問すると、Kさんは続けます。

「少し前までは、H部長でした。けど異動でいなくなったんで・・・。また誰か、共通の敵になるような人、現れないでしょうか・・・」

Kマネージャーの嘆きがあまりにもわかりやすく、解決策は目の前にぶら下がっているのにそこに全く気が付いていない様子に、かつての自分を見るようでした。

「共通の敵がいるとどうして協力できるんですか?」

「だって、どうやって攻略しようかって一緒に考えたりするじゃないですか。共通のメリットがあるわけですから。」

「じゃあ、共通の敵じゃなくても共通のメリット、互いにメリットになることがあればいいんですか?」

「え?まあ、そうですね。けど、そんなの、仕事でありますか?」

いぶかしげに私に問うKさんに、私は
「ないですか?」
と問い返しました。

「・・・ 考えつきませんけど・・・・」

「例えばチームの目標を達成するというのは共通のメリットにはならないですか?」

「え?ああ、チーム目標とかTさんは無関心なんですよ。個人目標が達成できれば良いと思っているんです。それじゃぁ本当は困るんですけどね・・・」

「エースなんですよね。自分の事だけじゃ困りますよね。それで、チーム全体に意識を向けてもらえるように、Kさんはどんな働きかけをしているんですか?」

「え?していないです。だって、そんなのわざわざ言わなくっても・・・」

「Kマネージャーはメンバー時代に、チーム目標に関心ありましたか?」

「え? 今みたいにはなかったです。」

「では、いつ頃から関心持つようになったんですか?」

「僕はマネージャーになってからです。」

「そうですか。じゃあ、Tさんも同じかもしれませんね。」

「けど、結構苦労したんですよ。もっと早くに、マネージャーになる前に色々と準備できていれば、こんなに苦労しなくても良かったのにって思うんですよね。」

「なるほどね。チーム目標が達成しなくても、個人目標が達成していれば、メンバー個人にはなんら評価等に差しさわりがないのですか?」

「はい。だから無関心だったんです。それで、いきなりマネージャーになったとたん、全体を見なきゃいけなくて、慌てました。」

「じゃあ、Tさんも慌てるかもしれないですね。」

「絶対、大変だと思います。特に、うちのチームは個人事業主の集まりのようなチームだから。けど、会社は、それじゃあいけないって、色々と仕組みとか変えてきているんですよね。」

「そうですか。ところで、TさんとKマネージャーの共通のやっつけるべき目標、まあ、敵でも良いですけど、何か共通に目指すことを作れませんか?」

「・・・・」

「敵じゃなくて、まあ、一緒に目指す高みの山みたいな感じですかね。Tさんもいずれはチームを背負って立つんでしょうし、Kマネージャーだって次のスッテプがありますよね。」

「個人事業主集団からの脱出! とか・・・・」

「素晴らしいですね。それって、Tさんにどんなメリットがありますか?」

「おそらく僕の後はTがマネージャーになるんでしょうから、今よりも協力的なチームになっていたらTだって運営が楽だと思います。それを今から一緒に手伝ってもらう、みたいな・・・・」

「Tさんは魅力的に感じるでしょうか?」

「わかりません・・・」

「そうですね。わかりませんね。もしかしたら転職を考えているかもしれませんし。けれども、少なくとも共通の敵が眼前に現れた時には協力関係が築けるということは、互いに全くNGな関係ではないということですよね。まずは、共通の目標、目的、一緒に目指す山を何にするか、腹を割って話し合ってみてはどうですか?」

「話し合うんですか?」

「そうです。話し合うんです。普段、どれくらい話していますか?」

「・・・・」

「ですよね。話してみないとわからないこともたくさんあると思うんです。今のままほっといても現状が悪くなることはあっても良くなることはないのであれば、まずは共通ゴールを見つけるために、Tさんと話をしてみる。そこから何かが始まると私は思いますが、いかがですか?」

「そうですね。普段、ほとんど話していませんから。あいつが何考えているのか、聞いてみます。」

そうしてKマネージャーはTさんに声をかけ、共通の敵ならぬ共通のゴールを探すために話し合いを何回か持ちました。
最初は煙たそうにしていたTさんも、Kマネージャーからの声掛けに次第に心を開いてくれるようになり、チームで一番の個人事業主ならぬスタンドプレーが多いYさんを協力者にしようと、それが共通のゴールになったそうです。

共通の敵=共通の攻略目標=共通目的(ゴール) ですね。
どんな場合も、「共通目的(ゴール)」に互いがコミットしていれば、自然と会話の数も増えますし、相互の助け合いも発生しようというものです。
チームの数値目標や経営目的が共通ゴールになれば一番良いのですが、そこになかなかコミットしづらいのであれば、チームオリジナルの共通ゴールを設定するのでも何ら問題はありません。

あなたのチームには全員がコミットしている共通ゴールはありますか?

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