戦略は正しいのに組織が動かない。
この現象は、多くの企業で起きています。
原因は実行力不足だと思われがちですが、実際にはそうでない場合の方が多いようです。
本当の理由は、目標設計の精度不足によるものです。
評価制度改定から見えた本質的課題
ある企業で部門リーダー向け目標設定トレーニングを実施しました。
きっかけは評価制度改定です。
制度設計を進める中で、私が最も強くお伝えしたことは、「目標設定の『質』が制度の運用効果を左右する」ことです。
次年度目標策定の時期と重なっていたため、制度理解だけでなく、実務に直結させる目的でトレーニングを実施しました。
そこには、社長にもオブザーバーとしてご参加いただきました。
リーダーたちが掲げたKPI目標に対して、私は評価制度の設計思想や戦略構造の観点から問いを投げ、数値根拠や戦略背景に関わる部分は社長に確認する形式で進行しました。
その目標が正しいかどうか、部外者である私に正解はわかりません。
あくまでも、答えはその場にいるリーダーや社長が自分達で「決める」というスタンスでトレーニングは行われます。
やりとりが進む中で、社長ご自身が
「ここは練り直した方が良い」
「この指標は戦略と整合していない」
と判断され、目標の精度が段階的に高まっていきました。
他部署の話の際も、リーダーたちは皆、「他人事」ではなく、「考え方」を吸収しようと貪欲に話に耳を傾けているため、自分の番が回ってきたときにも、「この方が良いんだろうか?」「こうしたいと思う」と自らの意見がたくさん出てきます。
更に、質問も多く飛び出します。
その様子は、「目標が自分の評価を決めてしまうという恐れからくる駆け引き」ではなく、「自らの成長が会社の成長に繋がる」という大いなる成長意欲と貢献姿勢の表れでした。
組織が止まるのは「行動力不足」ではなく「設計不足」
現場が動かない理由を「主体性が足りない」と結論づけてしまうケースは少なくありません。
しかし実際は逆です。
設計が曖昧な状態では、どれだけ優秀な人材でも動きが鈍ります。
なぜなら、現場は以下を同時に判断できないからです。
- 何を優先すべきか
- どこまでやれば達成か
- 他部署との関係性はどうなるか
つまり目標とは単なる数値ではなく、組織の意思決定構造そのものなのです。
トレーニングでは次の観点を確認しました。
①目的と手段が混同していないか
手段が目標になると改善が止まります。
②KPI責任構造は明確か
部門間で重複すると責任の押し付け合いが起きます。
③全員達成=全社達成の構造か
ここがズレている組織は必ず停滞します。
④測定可能か
測れない目標は管理できません。
⑤部署横断指標が機能する設計か
連携指標が曖昧だと組織は分断します。
経営者の言葉が示した変化
終了後、社長がこうおっしゃいました。
ここまで精度高く目標を考え抜き、リーダーたちが腹落ちできれば、メンバーへの説明も納得のいく説明ができるはず。あとは走るだけだ。
この一言がすべてを表しています。
目標が明確になると、説明が変わり、納得度が変わり、行動速度が変わるのです。
「今」、整えるべき理由
年度末〜決算前後は、経営判断の解像度が最も上がる時期です。
この時期は
- 来期戦略が固まり始めている
- 課題が可視化されている
- 意思決定が進みやすい
つまり、組織設計を見直す最適なタイミングです。
逆に、この状態を曖昧なまま新年度に入ると戦略は「スローガン」で終わります。
「戦略」「組織」「目標」
この3つは別物ではありません。
一体設計されて初めて機能します。
そして組織の推進力は、才能でも根性でもなく設計精度で決まるのです。
『組織を強くする実践知』
最新記事をメールでお知らせ!
✔ 無料
✔ いつでも解除OK
こちらから登録してください!
リーダー育成・組織開発の最前線から、あなたのビジネスを加速させる実践知をお届けします。

