宅配便を出しに近所のスーパーのサービスカウンターを利用しています。
通常1人体制のようですが、曜日や時間帯によって混雑している時2人体制の時もあるようです。
小さな袋包を知人に送るためにこのサービスカウンターを訪れたところ、順番待ちになっていました。
この日は2人体制のようでしたが、1人のベテラン社員の方はお客様の返金処理の手続きで随分時間がかかっているようでした。もう1人の方はいつもはレジ打ちをしている方ですが、今日はサービスカウンターへ。お歳暮を贈られる老婦人の対応をしていました。
お歳暮の送り先は複数件あるようで、送り状に丁寧に宛先等を記入している老婦人。
スタッフの方は、じっと正対してその様子を見つめています。15秒、30秒、1分。ただじっと見つめて立っています。
いつの間にかカウンターの前には5人もの順番待ちができていました。
しかし、スタッフの女性はそんなことはちっとも気にする様子もなく、ただただ老婦人の手元を見つめています。
私の後ろに並んでいた男性がしびれを切らして言いました。
「ボケっと見てないで、こっちの人が書いてる間、次のお客さんの対応したらどうなんだよ!」
するとこのスタッフさん、みるみる表情がこわばり、パニック状態になったのが傍目に見て分かりました。
どうしていいのかわからないといった様子で、ただ怯えているようにも見えました。
「どうぞ、次の方のをして差し上げて。私はまだ時間がかかるから。」
老婦人が優しく言いましたが、スタッフさんはますますパニックに。
このスタッフさん、どうやら男性の語気に怯えたのではなく、決められた、または自分で考えた順番通りの事柄とは異なることを要求されて、どうして良いのかわからなくなったようでした。
見ていてあまりにも可哀想だったので、助け船を出しました。
「こちらのご婦人が書き終わるまで少し時間がかかりそうなので、いったん、このご婦人の対応は休憩として、次の宅配待ちの方の対応をしてはどうですか?ご婦人の様子は私が見ていて書き終わったらお知らせしますから。そしたら、またご婦人の対応をしてあげてはいかがですか?」
スタッフさんは安心したように頷き、男性の宅配便の対応を始めました、
さっきの怯えた表情とは一転、丁寧に荷物の大きさを測り、笑顔で料金を告げるとテキパキとレジを打ち、お釣りを渡し、「ありがとうございました。確かにお預かりいたしました。」と大きな声で言っていました。
お金の受け渡しの際に老婦人の宛名書きは終わっていたのですが、くだんの男性の対応の途中でそれを告げるとまたパニックになると思い、一通りの流れが終ったところでスタッフさんにお知らせしました。
スタッフさんは安心したように老婦人の対応を始めました。
途中、顔なじみの副店長さんが通りかかったので事情を説明しました。
「いやね、彼女、仕事は丁寧なんですが容量悪くってね。」
「本当に一つ一つ丁寧で、応対も気持ち良いですよね。容量悪いというか、2つのことを同時に捌いたり、臨機応変というのが少し苦手なのかもしれないですね。サービスカウンターは臨機応変が求められるから、彼女にはちょっと重荷だったのかもしれないですね。」
私がこう言うと、副店長さんはハッと気がついた顔をなさいました。
「彼女、レジ打ちや商品陳列の仕事はとても評判がいいんですよ。」
そう言うと、チーフの女性に何やら指示を出して、暫くするとスタッフさんはサービスカウンターは他の方と交代して、いつもの持ち場のレジに戻りました。
「容量が悪い」とか、「気が利かない」とか、
忙しい毎日の中で一言で片づけてしまいがちなことですが
「〇〇をしている間に××をする」とか、「〇〇をしながら××の様子も見る」など、同時並行に物事を進めるのが苦手な人もいます。決められた手順を急に変更したことによって、自分の中で工程イメージが全くできなくなり、全く先へ進めなくなってしまう人もいます。
でも、そういう人たちの多くは、すぐに飽きてしまいそうな単純作業でも丁寧に丁寧に決められた量をしっかりと行うことができたり、自分勝手にルールから逸脱した方法を取ったりしません。
人によって、思考の特徴が異なるのです。
適材適所とはまさに言ったもので、メンバーの「特徴」をよく理解し、強みを見極め、メンバーが最も力を発揮できるところで仕事をしてもらう。
当たり前に言われていることですが、サービスカウンターでの出来事を通して、改めてその大切さを実感しました。