マネジメント・リーダーシップ組織開発

甲乙つけがたし

来週の地方出張に際して到着空港からレンタカーをA社で予約しています。週間予報によると目的地は来週も強い寒気が停滞する模様。冬装備が常でない場所柄、降雪や路面凍結に備えて、念のためスタッドレス使用へ変更の電話をA社の空港営業所へかけました。

最初、スタッドレス車は車種を変更しても満車の為、チェーンの携帯を勧められました。そもそもスタッドレス車そのものの数がきっと少ないのでしょうから仕方がないと思いました。
しかし、チェーンはもう何年もつけたことがありません。恥ずかしながら、自分一人でつけられるかどうかは甚だ疑問です。
その事を正直に伝えると、「女性お一人での運転ですか?」と尋ねられました。
「はい。私一人で。〇〇~△△あたりは夜間や早朝は凍結してノーマルタイヤだと怖いですよね?」
すると、電話口の若くてテキパキとした物言いの女性担当者は一旦電話を保留にした後、「クラスを上げるとスタッドレス車を用意できるかもしれませんが、他の営業所から回してもらうため即答できません。折り返し電話しますから少しお待ちいただけますか。」と言いました。

A社は大手でも目的地は地方都市です。
「他の営業所とはきっと隣県なんだろうな。申し訳ないな。でもありがたいな。」と思いました。

待つこと数時間。折り返しの電話がありません。
やっぱり難しいのかなぁ。キャンセル料かからないのは今日までだし。営業時間がもうすぐ終っちゃう。他のレンタカー会社に念のため聞いてみようかな。でも、一生懸命調整してくれているのかもしれないし、そうだったら申し訳ないし。先にA社に状況聞いてからの方がいいかなぁ。でも催促しているみたいでそれもどうかなぁ。
そう思い悩んで更に数時間。A社からの折り返し電話はありません。きっとA社のあの女性は奮闘してくれているけど難しいのだろうと思い、B社の空港営業所に問い合わせてみました。すると、希望の車種でスタッドレスの予約がすんなりとOKになりました。
しかも電話口のB社の空港営業所責任者と思しき男性はとても親切で、私が目的地数か所の最近の道路事情を尋ねると、とても丁寧に説明してくれました。チェーンまでは必要ないと思うけれど、ノーマルタイヤでは危険だということ。1週間後の天気なのでまだ分からないが、もしチェーンが必要だと思われたら当日受付時に対応できるようにしておくなど、とてもきめ細やかな対応に感激してしまったほどでした。

B社での予約と確認を終えるとすぐにA社に電話をしました。営業時間終了間際のギリギリになっていました。
朝とは違い、今度は年配の男性が電話に出たのですが、私が名前を告げると先方は「あぁ」と小さく声を出しました。「ん?」と思いながらも、朝の事情を簡単に説明したところで、その電話口の男性担当者が心配そうな声で私に尋ねました。
「もしかしたら、まだ折り返しのお電話を差し上げていないのでしょうか?」
その男性の電話の応対もとても丁寧で全く嫌な感じはしません。穏やかで丁寧な語り口調に誠実さが滲み出ていました。
私は却って恐縮してしまいました。「きっと変更が難しくて苦慮なさっているのだと思ったのですが、取消料のこともあるので、申し訳ありませんが、B社さんで予約を取ってしまったんです。」
するとその男性は一瞬の間の後、「大変申し訳ございませんでした。車種がひとつ上のクラスになり少しお値段は上がりますがスタッドレスでご用意できていまして・・・。」
これを聞いて、私は自分が恥ずかしくなってしまいました。
「なんで先にA社へ電話をして確認しなかったんだろう。催促するみたいでイヤだとカッコつけるからこういうことになっちゃった。せっかく無理して用意してくれたのに。どうするの!どちらかキャンセルしなきゃいけないのに・・・。バカな私・・・。」

私が自分を責めたほんの一瞬、恐らくその年配の男性は私の心の葛藤を感じたのかもしれません。
「お電話をすぐに差し上げなくて長らくお待たせしてしまい、不安なお気持ちにさせてしまって本当に申し訳ございませんでした。B社さんではご希望車種でのご予約なんですよね?今回は、こちらの落ち度ですので残念ですが私共をお取消しくださいますようお願いいたします。」

我が耳を疑いました。感動です!
正直言って、A社が用意してくれた車種ではちょっと立派すぎて、出張で乗るにはどうかなぁというのがありました。費用も倍近くになります。しかしそれにしてもこの男性担当者の対応と物言いは「あっぱれ!」意外の何物でもありません。
私は正直にその方に話をしました。
「ありがとうございます。せっかくご用意いただいて申し訳ないのですが、〇〇クラスだと仕事で使うには立派すぎてちょっと戸惑いました。最初に私がA社さんにお電話して確認すれば良かったのに、ダメなものだと勝手に思い込んでしまって。本当に却ってこちらの方こそ申し訳ありません。本来はここまでしてくださったのですからお世話になるのが筋なのですが、今回は本当に申し訳ないのですがお取消しをさせてください。ただ、朝に電話で対応下さった女性も、貴方様も本当にご親切に対応いただき、感激しております。3月にまた伺いますので、その分の予約を今、お願いしてもよろしいですか?」
そう言って、まだ未手配だった3月の予約をその場で完了させました。

確かにA社からの折り返し電話はなく(忙しくて忘れていたのかな?)、そこはマイナスポイントかもしれません。しかし、それまでの若い女性の対応、私には直接見えない時間の現場での対応、そしてミスが分かってからの年配男性の対応、どれも私の心を打つものばかりでした。
もちろん、B社の男性の対応もとても素晴らしかったことは言うまでもありません。
どちらも「甲乙つけがたし」と言うのが本当のところです。

B社のように最初から完璧に対応できればそれに越したことはありません。
しかし、万が一ミスをしてしまっても、そこに至るまでの心のこもった対応と、ミスの後の誠心誠意真心がこもった対応で、いくらでもリカバリーできる、いえそれ以上の好印象をお客様に持っていただくことができるのだとA社から学ぶことができました。

来週、目的地空港へ着いたら、B社でレンタカー手続きをする時、A社の窓口にもちょっと立ち寄ってご挨拶をしようと思っています。
だって、本当に真心のこもった対応をしてくださったんですもの。
真冬日の今日であっても、お陰様で心の中はぽっかぽか~です。

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