「最近の若手はすぐに辞めちゃって、何考えているのかわからないんですよ。」
Tさんからこんな相談を頂きました。
実際、Tさんの会社では若手の離職率が高く、頭を悩ませているそうです。
退職の理由はどこまでが本当なのかわからず、どうしたものかと困っていると・・・。
それなりに長いお付き合いのTさんなので、私は思い切ってジャブを打ってみました。
「転職支援会社の調べによると、20代若手の退職理由の1位は『上司に大切にされていない』だそうですよ。」
と言いました。
すると、みるみる顔を赤らめて、声を荒げたTさん。
「冗談じゃないですよ。仕事ですよ。大切にされていないとか、甘えるなって言いたいですよ。僕らの時代なんか、ほったらかしもいいとこだったじゃないですか!!!」
予想通りの反応。
私はいたって落ち着いて、Tさんに言いました。
「『大切にされていない』というのは、『物理的・時間的に至れり尽くせりかまってほしい』という意味ではないと思いますよ。
『精神的に孤独を感じる』『気持の上でほったらかしにされている』『存在を認められていない』とか、そういうことじゃないでしょうか。
私も新入社員の時、上司や先輩は添乗・出張で殆ど不在。丁寧に仕事を教わった記憶なんてほとんどないし、おまけに先輩のミス・クレームの処理を入社2-3か月の私がしなきゃいけなかったり、ホント、しっちゃかめっちゃかでした。
けれども、孤独ではなかったです。
2週間顔を合わせない上司でも、朝な夕なに電話をしてきて、仕事の指示・確認だけでなく、『大丈夫か?』『そろそろ帰れよ』『昼飯ちゃんと食ったか?』と、私個人の事を気にかけてくれていました。
つまり、精神的距離は近かったなと思うんです。
『大切にされていない』というのは、そういうのがない、感じられない、という意味なんじゃないかな、と私は思うんですけど、どうでしょうか?」
するとTさんは黙り込んでしまいました。
「『気持ち』ですか・・・」
「そうですね。物理的に離れていても、精神的距離が近ければ、孤独は感じづらいのかなと思うんです。
『気にかけてくれている』『見ていてくれる』とか、そういうのかな、って。
実際に一緒に何かをやるとか、常に手取り足取りとか、そうではないんじゃないかな、って。
同じほったらかしでも、昔のほったらかしは、その実、上司は見ていてくれて、ボソッと厳しいことを注意されたり、でも、それは見ているからこそ言えるわけで、そういうことを、私たちも感じていたから頑張れた、というのもあるのかな、って。
メールやチャットでは、無機質になっちゃうことでも、電話だったら声のトーンで気遣いも感じやすい。ほんの2-3分でも、直接顔を見ての話だったら、なおさらだと、そう言うのがあまりない、希薄、自分はいてもいなくてもどうでも良い存在なのかと。そういうのが、『大切にされていない』という表現になってるんじゃないかな、って思うんです。」
「・・・・。大切にしていなかったです・・・・・。」
「そうですか。今の時代は、マネージャーも大変ですからね。」
「自分のことで精一杯で・・・。けど、物理的・時間的問題ではなくて、気持ちの問題で孤独を感じさせていたんだとしたら、いや、おそらくそうだと思い当たる節があるんですけど、それはもう、本当に申し訳なかったと思います。そこまで気が回りませんでした・・・。」
「そうですか。でも、今はもう、分かったんだったら、これから『気持で寄り添う』取組みをなさったらいいんじゃないでしょうか。」
「そうですね。そうします。具体的には・・・・。また、相談に乗ってください。」
そう言ったTさんは、最初の暗く沈んだ表情とは打って変わって、明るい表情に変わっていました。
「上司に大切にされていない」
このフレーズをどうとらえるかはあなた次第。
けれども、そんな言葉が一緒に働いているメンバーから発せられたとしたならば、「甘えるな!」という前に、自らの言動・スタンスを深く振り返る必要があると思うのです。
あなたはメンバーを大切にしていますか?
メンバーは、あなたから大切に思われていると感じていますか?