誰だって変わることができる

誰だって「できる子ちゃん」

同じ師に学ぶ先輩のYさんは、ウインドサーフィンや水泳を楽しんでいる60代半ばのアクティブでとても素敵な女性です。
ウインドでは男性並みに飛ばす(?)そうですし、水泳はなんと!バタフライで泳いでいるのだとか。

ところがYさんはもともと泳ぎが得意だったわけではなく、お姉さまの強いお誘いがあって水泳教室に通い始めたのは60歳を過ぎてからでした。
その教室の先生は、健康のために楽しくプールに集うご婦人方にはおよそ相応しくないスパルタ先生で、いつも眉間に皺を寄せ、ニコリともしない不愛想で厳しい人でした。

初心者がバタフライに挑戦しようなどとはあまり思わないし、うまくできないバタフライほどみっともない姿はないと、どちらかと言うと皆が敬遠する泳法です。
ところが何を思ったかYさん。やってみようと思ったのだそうです。(格好良く泳いでいた人を見たとか見ないとか・・・)
最初は当然うまくいきません。バッシャン、バッシャン。ズボズボズボ・・・・。
しかし「きっとできる!」と自らを「できる子ちゃん」だと強く信じ、水泳教室で先生から言われたことを近所のプールでも地道に練習し続けました。
ある時、「センスあるんじゃない」とスパルタ先生がポツリと言ったその言葉にYさんはますます発奮し、なんと、ほんの数か月で誰もが驚くバタフライ泳者になったのでした。

「40年間指導してきたけど、こんな生徒は初めてだ!しかも若くないのに。60過ぎてんだぞ!!!」
驚きの声を隠さないスパルタ先生。その姿はどこか、嬉しそうでもあったようです。

この先生。現役時代はオリンピック選手を目指すほどの泳ぎ手だったようで、そのせいか、誰が相手でもまるでトップアスリートに対するように厳しく、かつ思いっきり不愛想でした。
たとえそれが近所のおばちゃん相手の水泳教室であってもです。
しかし、そんな先生をYさんが変えてしまいました。

水泳教室で先生から指摘されたことを区民プールで一生懸命予習復習したYさん。
その姿を直接見なくとも、月に1度の教室でYさんの成長を見るにつけ、「どこかで練習してるんだ。言われたことをちゃんとやってるんだ。」ということは当然理解でき、Yさんの成長がいつしか先生の喜びになっていったようなのです。

「センスあるなんて、私たち20年間習ってるけど、そんなの初めて聞いたわ!」
とはYさんのお姉さんの弁。
Yさんのスタンスが先生のそんな言葉を引き出したのかもしれません。
Yさんがただ一生懸命前へ進むことで先生にとても良い影響を与え、Yさんのバタフライの成長と共に、スパルタ先生はニコニコ先生に代わっていったのでした。

人が持つ影響力とは何ともすごいものですね。

今、ニコニコ先生は教室での生徒たちへの指導をとても楽しそうになさっているそうですし、通っている生徒さんの雰囲気も格段に良くなったそうです。
これまではプールに30分も入って一旦水から上がった後は、プールサイドから大きな声で指示を飛ばしていただけの先生でしたが、今は時間ぎりぎりまでずっとプールの中に入り、生徒さんたちにそれは丁寧に教えているとのことです。
だからみんな先生が大好き!先生も常にニコニコ楽しそうで、眉間に皺を寄せたスパルタ先生はすっかりと影をひそめてしまいました。
更に、格好良くバタフライで泳ぐYさんを見て、「私にもできるかも」「やってみたい」と、他の生徒さんたちも積極的にバタフライに挑戦するようになり、格好悪いとかみっともないとか人目を気にするのではなく、皆が自分の成長を楽しむようになってきて、俄然、教室の雰囲気も変わったのだそうです。

「自分が何かに一生懸命だったり、真剣だったり、そうすることで周囲に何か良い影響を与えることができるんだったら、こんなに嬉しいことはない。私は私なりに純粋に一生懸命生きることで、結果的に人のお役に立てるんだっら、本当に嬉しいよね。」
とはYさんの言葉です。

Yさんが先生とお教室に「良い影響」を与えたその一番のポイントは、Yさん自身の「純粋性」にあったのではないでしょうか。
先生を変えてやろうとか、教室の雰囲気を良くしようとかではなく、ただ純粋に一生懸命取り組んだYさん。だから、それを見ていた人の心に、見えないけど確かに存在する清らかな光を与え、その光が人々の中で大きく灯っていったのに違いありません。

そしてもう一つ。
このお話をしてくれたYさんから私自身も大きな影響を受けており、日々、自分に言い聞かせている言葉です。

「心の力ってすごいのよ。『できる』って思ったらなんでもできちゃうのよ。『できる子ちゃん』には誰でもなれるのよ~。」

そう! あなたも「できる子ちゃん」なんですよ。間違いなく!!

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