友人がご主人の喪服用の黒のソックスを買うというので、某大手紳士服量販店へ一緒に行きました。
「すみません。ソックス売り場はどこですか?」
近くにいた店員さんに尋ねると、
「あちらでございます。」
と丁寧に右手で少し向こうを指し示して教えてくれました。
「ありがとう。」
とお礼を言って売り場へ急ぐ私たち。
黒のソックスは・・・
まだ暑いからまだ夏物の薄い素材がいいわよね。
うちのは綿は嫌がるのよ。黒の麻とかはないわよね。
二人でおしゃべりしながら品物を手に取り、あーどでもない、こーでもないと適当なモノを探していました。
すると、ベテランと思しき店員さんが笑顔で近づいてきました。
「どのようなものをお探しでいらっしゃいますか?」
「ああ、喪服用の黒なんですけど、まだ暑いので。綿以外で適当なのありますか?」
彼女がそう言うと、店員さんは適当な2品を選んでくれ、そのうちの1つを彼女が選んでレジの方へ向かいました。
「どうもありがとうございました。」
代わりに私がお礼を言うと、とても感じの良い笑顔で返してくれたベテラン店員さん。
さすが、ベテランだわ! と思った次第です。
最初の店員さんがダメだったわけではありません。
彼女も丁寧に売り場を教えてくれました。
ただ・・・・
彼女は聞かれたことに答えて終わりだったのです。
おそらく、ベテランさんは、その後の私たちの様子を見ていて、絶妙なタイミングで声をかけてくれたのでしょう。
売り場でくっついてこられては迷惑千万です。
しかし、売り場を案内した後も、様子を見るともなく見ていて、必要かもしれないと思われるときに、厚かましくないように丁寧に声をかける。
これは、まさに「おもてなし」の世界なのではないでしょうか。
つまり、尋ねられたことだけに答えるのではなく、さらにその一歩先を行き、答えた後もしっかりとお客様を密かに見守り、必要に応じて適したサービスを行う。
まさにこれが店員さんとしてベストなのだと思いました。
レジでお勘定を済ませた後、友人が言いました。
「あのベテランさん、すごく感じ良かったわよね。若い子、あとで怒られたかしら・・・。『どこ見てんのよ』って。」
私はこう言いました。
「何か言われたかもしれないけど、あのベテランさんだったら、叱るんじゃなくって諭すんじゃないかな。だって、それくらい素敵な人だったじゃない。ああいう人だったら、接客だけじゃなくて、後輩にもちゃんとしてるんじゃないかな。」
紳士服の〇〇〇。
素晴らしい店員さんから学ばせていただきました。