「営業マンとお客様の相性が合わなくて何度もクレームになっていて大切な既存のお客様を失いそうなんです。こういう時、どうしたらいいんでしょうか・・・」
新任管理職研修の振り返りディスカッションの中で、こんな質問が出ました。
こういうの、私は大好きです。
質問の内容ではなく、一人から出た質問を色々な視点からみんなで考える、そのライブ感がたまりません。
「他の皆さんはどうですか?」
私の問いに、様々な意見が出てきました。
「僕は相性合わないんだったら担当替えします。無理に担当させてクレームになるよりも、相性の合うお客様を担当させて、自信をつけさせた方が良いと思うので。」
「僕も担当変えます。ただ、それは最後の手段で。今、似たようなケースがあるんですけど、僕が前に担当していたお客様なので、必ず一緒に言って振り返りするようにしています。お客様から『俺が育ててやるよ』とおっしゃっていただいて。けど、『ばかやろう~』と怒鳴られることも何度もあって、ヒヤヒヤものですけど。」
「僕のところは相性合わないからと言って担当変えられるほど要員いないです。ギリギリの人数なんで。」
「僕は営業じゃないから分からないですけど、『相性合わないから変える』というのは、なんか短絡的な気がします。」
色々な意見が活発に飛び交い、ずっと行っていたい気持ちになりますがそういうわけにもいきません。
質問者さんの様子を見ると、どうにも腑に落ちないという表情をしていました。
「どうですか?ヒントはつかめましたか?」
との私の問いに、彼は私にも意見を求めました。
「尾藤さんはどうだったんですか?」
こういう場合、私の考えが正解と捉えられるのは危険なので、必ず前置きをします。
「私がどうだったかを言うのは簡単ですけど、あくまでもそれは私のメンバーのその時の対応であって、マネジメントに絶対的な正解はありません。
ケースバイケース。その時々によって違います。
ベターであってもベストかどうかは分かりません。
強いて言うなら、ベターと思って下したジャッジをベストにする努力を決して怠ってはいけないということだと思います。」
そして、私の過去の経験談をいくつかお知らせします。
しかし、私の過去の経験談など何の役にも立ちません。
何度も言う通り、その時々によってベターは異なり、そのベターチョイスをベストにするのは当事者次第だからです。
けれども、どんな場合にも共通の必須原則があります。
それは・・・・
その選択が、当該担当者(この場合であればメンバー)の育成・成長にとって有効で必要な選択かということです。
クレーム処理が面倒だからとか、売り上げに関わるからとか、マネージャーとしての自分の評判を下げるからとか、そういう理由からの判断であっては決してなりません。
その担当者の半年先、1年先、3年、5年先を見越して、その成長を願って今現在のジャッジが妥当かどうかを判断すべきです。
質問者のマネージャーさんは深く頷き、「考えてみる」と答えました。
そう!それで良いのだと思います。
それくらいメンバーの将来について、成長にかかわる者として責任を担っている、その覚悟こそが、きっと正しい判断を生むに違いないからです。