マネジメント・リーダーシップ

上司の影響

もう10年近くお世話になっているお店で、この頃とても気になることがあります。
そこで提供されるサービスがお気に入りで、また、店長さんとも仲良しなのですが、若手や新人さんたちが、全員ではないのですが、明らかに店長さんの前では委縮していると見受けられるのです。
イキイキと笑顔で若手ながらに店長さんと丁々発止のやり取りをしている人もいるのですが、今日、とても気になった男性は、完全に表情が強張り、声は上ずっていました。
見ると、店長さんはお客様の手前、普通にしているつもりのようなのですが、そこからは緊張感というか、物凄くピンピン張り詰めたオーラが発せられていて、「あぁ、なんだか一昔前の私みたいだな」と思ってしまいました。
自分では全く気がついていないのですが、周囲の誰が見ても厳しく怖い上司なのだろうということが明らかに見て取れ、また、部下が委縮している事にも上司は気づいていないけれども周囲は皆知っているという、例のパターンです。

「ねえねえ、店長さん。A君の事、イラっとしたでしょう?」
もう長い付き合いだし、私の仕事の事も店長は知っているので、思い切って私はこう言ってみました。
「わかりますか?」
苦笑いする彼女に
「もう、バレバレ。誰が見てもそうよ。けどね、A君がパリッとしてないのは明らかにそうなんだろうけど、店長さんが損するからね、気をつけて。」
と言いました。
「え? パリッとしてない部下にてこずってるんだろうなとか、頑張ってるんだろうな、とかは思われないんですか?」
意外そうにそう言う彼女に、私は大きく首を横にしました。
「逆よ、逆。相手がどんなにダメ男くんやダメ子ちゃんであっても、部下が上司の前で委縮する様子を取る様子が見て取れた時点で、上司がダメ上司になっちゃうのよ。上司のせいでパフォーマンス落ちてると思われても仕方ないもの。
どんなにイラついても腹が立っても、店長に委縮してしまう状態を作っちゃだめなのよ。店長の器が問われるもの。
確かにA君見てると、お客の私だって文句言いたくなるんだから、店長がイラつくのは分かるけど、委縮させた時点で店長もダメ上司になっちゃうのよ。
自分の器を広げてくれるメンバーが来たと思って、気持ちをもっとゆっくりと大きく持った方が、結局は店長の為にもAくんにとっても良いと思うよ。」

「店長としての器」という言葉に、頭の良い彼女はすぐに理解したようで、自分のイラっとをストレートに部下にぶつけてしまっていたことを反省したようでした。

「ありがとうございます。いろいろと思いはありますが、部下が委縮した様子がお客様に伝わってしまう事自体が、私がダメってことですよね。店の雰囲気を私が壊しているに他ないんですから。気をつけます、教えていただいてありがとうございます。」

やはり、彼女にはストレートに伝えて良かったと思いました。
人間ですからイラっとしたりムカついたりは誰でもあります。
しかし、それを上司が部下に対して行った時、それがたった一度でも強度がとても強かったり、それほどの強度ではないにしても頻繁にある場合、部下の委縮を招いてしまうかもしれません。
そしてそれらは結果として、部下のパフォーマンスを下げるばかりでなく、上司自身の評判を下げ、また、他のメンバーや関連部署、お客様へも迷惑をかける結果になってしまう可能性大なのです。

ポジションが上がれば上がるほど、ちょっとした言動や意識しない振舞いさえも、周囲に与える影響は大なのです。
もちろん影響には悪い影響だけでなく良い影響もあります。
できることなら、良い影響をたくさん与えることができる、そんなマネージャーになりたいものですね。

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