上場企業のグループ会社で役員を務めた経験のある方が
こんなことをおっしゃっていました。
業績不振で子会社は解散することになり、
社員はほんの一部の人が親会社に転籍できる以外は、
大部分の人が解雇になることが決まりました。
その時最も悔やまれたことは、
どこへ行っても通用する人材に社員を教育できていなかったことだったと、
当時を思い出し、唇を噛みしめながらお話していたのがとても印象的でした。
どこへ行っても通用する人材。
彼がいると、自然にチームの雰囲気が前向きになり、皆同じ方向を見ている。
彼女のお陰で、ピリピリした雰囲気でも、
それまでのコンフリクトがなかったように穏やかな雰囲気になる。
いつも突飛と言えるほどに奇抜なアイデアをどんどん出してくれるので、
それがチームのイノベーション的発想の源になっている。
おそらくそれは単に知識やスキルのことではなく、
コミュニケーションだったり、チームへの影響力だったり、
問題発見力や柔軟で幅広い思考力だったり、
いろいろなことを指すのだと思います。
自分の会社がなくなった時のことを想定して
人材育成をする企業はあまりないと思います。
しかし、不幸にもそのような時が来た時に、
「我が社の社員はどこへ行っても勝負ができる」
「安心して次へ送り出せる」
と自信を持って言えるということは、
すなわち「我が社の社員は他社の社員に勝るとも劣らない」
と胸を張って言えるということではないでしょうか。
個人個人それぞれの強みの総和で
勝負をしていかなければ時代に拍車がかかっています。
そのためには金太郎飴的人材を育てるのではなく、
一人一人の強みをしっかりと引き出し、育て、
異なる特徴を持つ個別のメンバーの凸凹調和を図り、
チームで結果を出すことができるよう
メンバーを後押しするマネージャーの存在が不可欠です。
出る杭は打たれる組織であっては、金太郎飴社員しか育たないからです。
これまでの私の経験から言うと、歴史ある大企業ほど
「俺について来い!」
「背中を見て育て」
「空気を読め(和を乱すな)」
など、残念ながらマネジメントスタイルが旧態依然としているように感じます。
裏返せば今現在、
優秀なマネージャーさん達が大勢いるということなのかもしれません。
しかし、そういうマネージャーの下で
考えることを止め、頼ることを覚えてしまったメンバーたちは、
他社で活躍するどころか、他部署はおろか、
今のマネージャーの下以外では通用しない社員ばかりになってしまいます。
そう、メンバーとして優秀だったマネージャーほどもしかしたら、
自分のメンバーの成長を阻害しているのかもしれません。
あなたのメンバーは他社でも活躍できますか?
競合相手から「欲しい!」と言われるメンバーを育てていますか?
そしてあなた自身は
「是非、我が社のメンバーも育ててほしい!」と
他社から望まれるマネージャーですか?