組織開発

あの人の問題ではなく私たちの問題

S部長の携帯番号を聞いていなかった私は、いつもはメールをするのですが急いでいたためオフィスへ電話をしました。
呼び出し音がずっと鳴っているのですが誰も電話に出ません。
時間はちょうどお昼の12時を過ぎたばかりです。
全員でお昼休みで誰もいないのかしら・・・
不思議に思いながらも午後にかけ直すことにしました。

二度目にかけたのは14時半頃です。
10回以上コールして、もう切ろうかと諦めかけた時、男性が電話を取りました。
「はい。Nです。」
暗く沈んだ声で活舌も恐ろしく悪く、ほとんど何を言っているのか聞き取れないほどでした。
個人宅へ間違えてかけてしまったのかと思ったほどです。
「〇〇会社さんでしょうか?」
「そうですけど」(変わらず暗く重たい雰囲気で)
「S部長はいらっしゃいますか?」
「いません」(えっ? それだけ?」
「お出かけでいらっしゃいますか?」
「そうだと思います」(うそ・・・)
「何時ごろお戻りかお分かりになりますか?」
「わかりません」(ははは。やっぱりそう来たか)
「では、インフィニティの尾藤から電話があったとメモを残していただいてよろしいでしょうか」
「はい」(本当に残してよ)
「ではよろしくお願いいたします」
と最後まで言い終わらないうちに電話はガチャンと切れてしまい・・・

いやぁ、久しぶりにこの手の電話対応を受けました。
念のため、メールでもS部長に「連絡ください~」と送っておいたところ、「メール見たよ~」と電話を頂くことができました。

本来の用件よりも私はS部長のオフィスが気になって仕方ありません。
「大丈夫ですか? S部長のところ」
そう言って、電話対応の件を話しました。
「個人の問題じゃないような気がするんですけど。全体的に沈滞してませんか?本当に大丈夫?」
よく知った間柄なので遠慮なく突っ込んだ私に、S部長は「実はね、困っててさぁ」と、すっかり「お疲れ職場」になってしまったご自身の部門についてお話しくださいました。

「けどさぁ、どうして個人の問題だと思わないで、全体の問題だと思ったの?」
S部長の質問に私は「野生の勘!」とふざけながらも次のように言いました。
「だって、本当にひどかったもの。あそこまでひどいと、それはもう個人の問題じゃないと思うのよね。誰も注意しない、注意する余裕もない、他人には無関心、職場全体に気を配る余裕もなく自分の事で精一杯。そんな負のオーラが電話の向こうからビシバシ伝わってきた。個人の問題だったらね、中途半端に失礼なんだけど、今回は思いっきりダメダメだったから。Sさんが嫌われているだけとかそういうことじゃなく、全体に毒素蔓延していて、みんなやられちゃってるんだろうな、と思ったわけ。
ネガティブな行動を個人の問題と捉えるか、組織の問題と捉えるか、人それぞれだけど、多くの場合、私は組織の問題と捉えます。だってね、チームが真に機能していたら、そういうネガティブ行動は他のメンバーが何らかの指摘をして改善に努めるとかあるだろうし、そもそも電話に誰も出ないとかないと思うから。」

「なるほどね」と頷くS部長。
「個人の問題ではなくチームの問題ね。」
「そうですよ。『あの人の問題ではなく、私達の問題』ということです。」

その後、S部長と「S部長チームの問題」について話し合った私達。
問題に対する当事者意識を持つか持たないかで、解決のための考え方も問題に対するストレスも随分と違うものだとS部長は実感していたようでした。

あなたのチームのあの人の問題。
それはあの人の問題ではなく、あなたたちの問題かもしれません。
そう考えた時、あなたの考え方は、行動は、どのように変わりますか?

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