育成には順序があります。
① 部下に代わって◯◯する(手本を見せる。イメージさせる。)
② 部下に対して◯◯する(やり方、スキルを具体的に教える)
③ 部下と一緒に◯◯する(どれくらいできるかの見極めやフォローなど)
④ 部下を待つ。独りにしておく(任せる。見守る。上司が手離す。独り立ちさせる。)
④が一番難しく、特に「成長を待つ」については、上司の器の大きさを問われるところかもしれません。
なぜなら、任せることは「失敗するかもしれない」というリスクを受け入れることであり、「自分でやった方が早い」という誘惑と戦い続けることだからです。
しかし、このステップを飛ばしてしまうと、部下は永遠に自律できません。
山本五十六の名言に学ぶ育成の本質
この4段階の育成プロセスを、実に端的に、そして深く表現しているのが、山本五十六元帥の名言です。
やってみせ、言って聞かせて、させてみて、
ほめてやらねば、人は動かじ。
話し合い、耳を傾け、承認し、
任せてやらねば、人は育たず。
やっている、姿を感謝で見守って、
信頼せねば、人は実らず。
この名言と先ほどの4段階は、見事に対応しています。
① 部下に代わって◯◯する → 「やってみせ」
② 部下に対して◯◯する → 「言って聞かせて」
③ 部下と一緒に◯◯する → 「させてみて、ほめてやる」
④ 部下を待つ → 「任せて、感謝で見守り、信頼する」
この名言を現代のマネジメントでどう実践すればよいのか、一つひとつ紐解いていきます。
「やってみせ」── 手本は言葉より雄弁
「やってみせ」とは、手本を見せることはもちろんですが、もっと本質的な問いがあります。
自分で(能力的ではなく物理的・環境的に)できないコトや、やりたくないコトをメンバーにさせていませんか?
具体例
× 悪い例: 自分は残業せず定時で帰るのに、部下には長時間労働を強いる
× 悪い例: 自分は顧客訪問しないのに、「もっと現場に行け」と指示する
× 悪い例: 自分は新しいツールを使わないのに、部下には「DX推進」を求める
○ 良い例: 難しい顧客対応は最初に自ら同行し、対話の進め方を見せる
○ 良い例: 新しい業務プロセスは自分が率先して試し、その姿を見せる
○ 良い例: 失敗したときこそ、自分がどう向き合うかを背中で語る
「やってみせる」は、スキルを見せるだけでなく、あなたの姿勢や価値観を伝えることでもあるのです。
「言って聞かせて」── 説得ではなく納得
「言って聞かせて」とは、説得することではなく、メンバーが納得することです。
一方的に指示を出し、理由も背景も説明せずに「やれ」と言っていませんか?
ポイント
・ Why(なぜやるのか)を丁寧に伝える: 目的や意義を共有する
・ What(何をするのか)を明確にする: ゴールイメージを具体的に描く
・ How(どうやるのか)を示す: 方法論やステップを分かりやすく
納得がないまま動かされた人は、指示待ち人間になります。
納得して動いた人は、自ら考え行動する人になります。
「させてみて」── 初めての挑戦を見守る
「させてみて」の段階では、初めての時こそ、可能な限り見守ってあげたいものです。
実践のコツ
・ 最初は横にいて、困ったときにすぐサポートできる体制を作る
・ 「失敗してもいいよ」と明言し、心理的安全性を確保する
・ 途中で口を出したくなっても、本当に危険でない限りは我慢する
任せたのに放置する。
これは「任せる」ではなく「丸投げ」です。
特に初めての挑戦では、適切な見守りとフォローが不可欠です。
「ほめてやらねば」── 結果ではなく、姿勢を褒める
「ほめてやらねば」で大切なのは、結果ではなく、行動やそこに至る態度・あり方を褒めることです。
結果だけを褒めていると、メンバーは「結果を出さなければ認めてもらえない」と感じ、チャレンジを避けるようになります。
褒めるべきポイント
・ 努力のプロセス: 「毎日コツコツ続けているね」
・ 姿勢や態度: 「困難な状況でも前向きに取り組んでいるね」
・ 工夫や創意: 「そういう視点で考えたんだね。面白いアプローチだ」
前回の記事でお伝えしたHaving・Doing・Beingの視点で、特にDoingとBeingを褒めることが、持続的な成長を生み出します。
「話し合い、耳を傾け、承認し」── 対話と受容
自分の意見ばかりを押しつけていませんか?
メンバーの考えや気持ちを聴いてあげましょう。
「承認」とは何か
承認とは、「同意する」ことではありません。
・ 意見を取り入れるかどうかは別として、意見を言ってくれたことには感謝する
・ 気持ちや感情は受け止めてあげる。それが承認です。
実践例
部下: 「この方法は効率が悪いと思います」
上司: 「そう感じているんだね。教えてくれてありがとう。どの部分が特に気になる?」
たとえ最終的にその意見を採用しなくても、「あなたの考えを聴いた」「あなたの気持ちを受け止めた」というプロセスが、信頼関係を築きます。
「任せてやらねば」── 勇気を持って手を離す
「任せて」あげることは、マネージャーにとってはある意味、勇気がいることです。
- 失敗するかもしれない
- 自分でやった方が早い
- 期待通りの結果にならないかもしれない
そんな不安と戦いながらも、そこが度量の見せ所です。
多少リスキーであっても見守ってあげましょう。
失敗から学ぶ経験こそが、メンバーを大きく成長させます。
「任せる」と「丸投げ」の違い
・任せる: 目的と権限を明確にし、困ったときはサポートする準備がある
・丸投げ: 何も伝えず放置し、結果だけを求める
任せるとは、信頼と責任をセットで渡すことです。
「感謝で見守って」── 結果ではなく、姿勢への感謝
「感謝で見守って」とは、結果に対して感謝するのではなく、ただ真面目に取り組む姿勢や態度に対しても感謝することです。
視点の転換
多くの上司は「部下を育てている」と考えていますが、実は逆です。
メンバーのお陰で、あなた自身が人としての大きな成長の機会をもらっているのです。
- 忍耐力を学ぶ
- コミュニケーション力を磨く
- 人を信じる力を養う
- 自分の未熟さに気づく
仕事に取り組むメンバーに、常日頃、感謝の気持ちを忘れずにいましょう。
「信頼せねば」── 人として信頼する
「信頼せねば」で重要なのは、結果が出ることを信用するのではなく、メンバーを人として信頼することです。
「信用」と「信頼」の違い
・信用: 過去の実績や能力に基づく評価(条件付き)
・信頼: その人の人間性や可能性を信じること(無条件)
あなたがメンバーを信頼しない限り、メンバーもあなたを信頼してくれません。
上司と部下である前に、人と人との信頼関係が何より大切です。
部下育成は、上司自身の成長
部下(メンバー)育成とは、上司(マネージャー)自身の人としての成長次第です。
- 手本を見せられるだけの行動をしているか?
- 相手が納得するまで丁寧に伝えているか?
- 失敗を許容し、見守る忍耐力があるか?
- 結果だけでなく、姿勢を認めているか?
- 対話し、耳を傾け、受け止めているか?
- 勇気を持って任せているか?
- 感謝の心を持っているか?
- 人として信頼しているか?
部下が育たないと嘆く前に、自分のあり方を見つめ直しましょう。
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