マネジメント・リーダーシップ組織開発

退職代行サービスに思う

会社を去る決意をした時、その意思を会社に伝えるのは厄介な仕事です。
私自身、退職の意思を伝えたこともあるし、伝えられたこともあります。

伝える側だった時には、「いつ言おう・・・」と考え、その日が来てもタイミングを計り、予定通りいかなくて日延べとなったり、勇気が持てなかったり、心臓をバクバクさせながら意を決して伝えたものでした。
また、伝えられる側の場合、「ちょっといいですか?」と声をかけられた時点で「あ!きた?」と思うことが殆どで、青天の霹靂だったことは、私の経験では皆無でした。
「あ!きた?」と思うのは、やはり、そこに至るまでのあれやこれやです。
もしかして辞めることを考えいるのではと感じた時には、その都度、声をかけて話をするようには努めますが、その時点では既に時遅し・・・ と言うことも正直ありました。
「決意」に至る前になんとか出来なかったものかと思うのですが、それは後の祭り。
本人の意思が固かったり転職先が既に決まっていたりと、翻意に至ることはまずありませんでした。

それにつけても考えさせられるのは、最近の「退職代行サービス」です。
ここまで人間関係が希薄になっているのか、または悪くなっているのかと、悲しくなってしまいます。

しかしその「関係性の希薄化」は今後、どんな職場においてもますます拍車がかかることでしょう。

そもそもITの進化で業務上パソコンを使うことになった時から、仕事の「個業化」は始まっています。
そして今では会社に出勤せずとも仕事が出来てしまう世の中です。
一層、個業化は進み、「チーム」とか「職場」という概念がなくなってしまうかもしれません。

自分は他人にペースを乱されることなくたんたんとできるからその方が良い。
そう言う人もいるかもしれません。
しかし、躓いたり悩んだりした時、相談したり励まし合ったりすることによって生まれる「目に見えない力」は数値で測ることはできませんがそれは大きなものです。
難易度が高いものに挑戦したり、時間や量に追われたり、そのような時に感じるどうしようもないストレスを癒してくれるのも同様です。

個業化は孤独を生み、ストレスを増大させます。
働く環境が時代の流れと共に変化し、個業化を避けることができないのであれば、より一層必要なのは、「話し合うこと」「気持ちを分かち合うこと」だと思います。
とてもシンプルなことで、そんなことのためにわざわざ時間を費やすのは却ってストレスだという人がいるかもしれません。
しかし、「今」だけを見るのではなく、少し先の未来を考えた時、やはり、「たった一人」で頑張るのではなく、「共に頑張っている仲間」がいて、「状況を理解してくれている仲間」がいるという心の支えはとても大きな力となるでしょう。
たとえ物理的環境においては一人でも、自分には同じ目的のもと共にそれぞれの場所で頑張っている仲間がいるという、精神的には一人ではないという状態が人を支えるのです。

そう言えば、つい先日のワークショップで、ある企業の経営企画室の担当課長さんがこんな話をしていました。
「マル秘の仕事が多いので、僕が何をしているかは、同じ室のメンバーも知らないですし、僕も他のメンバーの詳しいことは知りません。ミーティングでもそういうことには触れないし。
最近の新人は、何考えてんだか、辞めちゃうんですよね。マル秘の仕事がイヤなら経企でなんてやっていけないですよ。そもそもが間違えているんですよね。」

そもそもが間違えているのはあなたよ!
と私が当該マネージャーに伝えたのは言うまでもありません。

仕事の内容を口外できないことと、チームとしての対話がないのは別物です。
それでは仮面夫婦ならぬ仮面チームですものね。

退職代行サービスが流行っているその背景には、こんな仮面チームが横行していることが理由の一つとしてあげられるかもしれません。

ごくごく当たり前で単純で、でもだからこそとても大切な事。
それは、チームメンバー相互での対話です。
今、自分はどんな状況なのか。どんな気持ちなのか。
余裕はあるのか。切羽詰まっているのか。
困っているのか、SOSを必要としているのか。
誰かをサポートしてあげられる余裕があるのかないのか。

マネージャーがメンバーのパフォーマンスを上げようと考える時、この当たり前で単純で見過ごされたり後回しにされそうなことを、しかしこれこそがとても重要だと認識し、わざわざ時間を取って行うことが必要なのです。

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