「エンゲイジメントが上がると本当に組織の生産性が上がるのですか?僕は昭和のマネジメントで育ってきた世代なので、『楽しく』とか『仲良く』などの感覚を仕事に持ち込むこと自体が理解できないのです。」
こんなご相談をいただきました。
私も昭和のマネジメントで育った世代ですが、「楽しくなければ仕事ではない。楽しめなければお客様に良いコトをお届けできるはずはない。」と若い時から自然と考えることができていたと思います。それは時代に関係なく、私を育ててくれた環境が、外発的動機付けではなく、内発的動機付けに基づいた場だったからかもしれません。
そこにはアメとムチのようなマネジメントは存在せず、内発的動機を最大限尊重して私のやる気を引き出しながら、実力よりも少し難しい目標を達成できるよう、常に見守ってくれる上司や先輩がいました。チーム目標は存在しましたが、自分の目標は自分で決める。やり方も自分で決める。アドバイスや修正はありましたが、私の考えや気持ちを常に尊重するスタンスで関わってもらったと思います。
自分で決めたことなので、自分に責任があります。上司が「これでOK」と言ったとしても、自分で決めたことです。そこは責任転嫁するほうがおかしいというものです。
自分で決めた目標、やり方ですが、上司は常に温かく見守ってくれ、必要な時には適切なサポートを与えてくれます。抜群な距離感で接してくれ、「助けがほしいな」「アドバイスが聞きたいな」と言うときは、まるで私の心の中を見ていたかのようなタイミングで関わってくれました。
チームでは互いの目標を共有しあい、必要な情報をシェアしあうのはごく自然の成り行きでした。先輩後輩関係なく助け合い、各々が自ら決めた目標を互いにサポートしあう、そのような関係性でした。
チームは「仲間」であり「同志」であり「家族」であり「ライバル」のような関係でした。営業先でしんどい、きついことがあったとしても、オフィスにかえってチームメンバーと言葉を交わすことでエネルギー補充ができ、「また頑張ろう!」と思える日々でした。
「会社に行きたくない」「日曜日の夜が憂鬱になる」とは無縁であり、しかし、常に仕事に追われていて、休むと不安になる、などという中毒症状とは全く無縁の、いわゆる「エンゲージメントが高い」状態でした。
仲良しチームではなく、適切に良好な関係性のチームであるがゆえに一人一人のやる気は上がり、私自身も自分の力以上のパフォーマンスを発揮できていたのではと考えます。(その後、リーダーの異動でチーム状態が変わってしまった時、同じように頑張っているつもりなのに、パフォーマンスは明らかに落ちてしまいました。)
結果の質を上げたければ、まずは関係の質からと言いますが、関係の質を上げることで思考の質が上がると同時に、エンゲイジメントも当然ながら上がるのです。
まだ疑心暗鬼で信じられないという人も、今、100%満足できる状態でないのならば、ぜひ、チャレンジしてみてください。
仕事を楽しむ、仲良くなることで「組織が緩む」などと考える心配は、まったく不要です。その証拠に、スポーツであれ何であれ、真に強いチームは関係性が悪いということは決してなく、チームメンバーのエンゲイジメントは皆等しく高いからです。
結果が出ているからエンゲイジメントが高くなるのではなく、エンゲイジメントが高いから結果に結び付くのです。その順番を間違えてはいけません。
結果を出したければエンゲイジメントを高めましょう。エンゲイジメントを高めたければ、あなた自身のマネージメントのあり方を見直しましょう。