戦略人事組織開発

「黙って去る社員」を生み出さないために:組織の「度量」を測る社員の声

去り行く顧客と、黙って去る社員の共通点

「クレームを伝えてくれるお客様はありがたい。」
ビジネスの世界ではよく耳にする言葉です。
なぜなら、多くのお客様は何も言わず、黙って「去っていく」からです。
そして、二度と戻ってこない。
顧客心理をこんな風に表現することがあります。

これは、組織で働く人にも全く同じことが言えると、私は長年の経験から強く感じています。

不平や不満を口にする社員。
時に反発するように見える社員。
かたや、心の中に思うことが山ほどあっても、何も言わない社員。

多くのマネジメント層は、後者の「何も言わない社員」の方が扱いやすく、
「良い社員」だと考えがちです。
しかし、「組織の成長」という視点から見ると、実は前者こそが「ありがたい社員」なのです。

1.「不平不満」の裏に隠された「期待」のサイン

不平や不満の中には、必ずと言っていいほど「改善の種」が潜んでいます。
「文句を言う」という行為は、その対象に対して
「まだ改善の余地がある」「もっと良くなるはずだ」という
期待をわずかでも持っている現れに他ありません。

一方で、「何も言わない社員」の中には、
「どうせ言っても無駄だ」「もうこの組織には期待しない」と、
完全に諦め、望みを抱かなくなってしまった人が山ほどいます。
彼らは黙々と自分のやるべきことをこなし、
時期が来たら音もなく組織を去っていきます。
彼らの声が上がらないことで、組織は変化の兆候を見逃し、
気づけば成長の機会を失ってしまうのです。

2.「表面の言葉」の奥にある「本音」を汲み取る力

社員の要望や要求を文字面通りに受け取ると、
「なんだ、文句ばっかりだ」と見えてしまうかもしれません。
時に感情的で、建設的ではない表現になっていることもあるでしょう。

しかし、その表面上の表現に隠れた彼・彼女たちの「本当の想い」を深く汲み取ることが、
マネジメント層には求められます。
そして、そこに潜む組織の「隠れたリスク」や「成長の機会」に気づき、対応することが必要です。

それこそが、社員が「自分たちの声が届いた」と実感し、エンゲージメントを高めるきっかけとなります。
社員の主体性が引き出され、組織全体がポジティブな方向へと向かい始めるのです。

これまで私が関わってきた企業のマネジメント層には、大別すると二つのタイプがあります。

ひとつは、コンサルである私に、社員の生の声を伝えてほしいと心から思っておられ、
どんなに厳しく耳の痛い内容であっても、真摯に受け止め、改善の種を探して組織の成長につなげようとする方です。
もう一つは、社員の「うるさい声」を届けるコンサルにも敵対感情を抱いてしまい、
耳の痛い意見は排除してしまう方です。

どちらのタイプが、社員が「ここで頑張りたい」とイキイキと働く組織を作ることができるか、
組織を成長させることができるか、言わずもがなです。

うるさい声を追い払うのではなく、まさにそうした声にこそ真摯に耳を傾ける。
その「度量」を持つ組織こそが、本当に強く、良い組織を作ることができます。

さて、あなたの会社は、その「度量」を持てていますでしょうか?
「黙って去る社員」を生まない組織であるために、
今一度、社員の声への向き合い方を考えてみませんか?

 最新記事をメールでお知らせ!
  ✔ 無料 
  ✔ いつでも解除OK
 こちらから登録してください!

タイトルとURLをコピーしました