戦略人事

「やらせる経営」が失敗する理由 ― なぜ現場は動かないのか

「このシステム、誰が作ったんだよ?!」

J社時代、自社システムに対して、営業現場では不満が爆発していました。

・使いにくい
・入力が面倒
・仕事が遅くなる

先輩たちは皆、使いたがらない。上司さえも、古いやり方をなかなか変えようとしない。
若手だった私も、正直同じ気持ちでした。

「どうせ、現場のことを分かってない人が作ったんだよ。」
でも会社は「使え」と言う。
どうせ使わないといけないなら、徹底的に使いこなしてやろう。
どこかへそ曲がりな私は、そう思い、結果的に、支店で一番、いえ、おそらく管内で一番、そのシステムを使いこなせる人間になっていました。

改めて思うのは、営業現場が反発していたのは、システムそのものではなかったのかもしれません。

なぜこれが必要なのか。
誰が、どのように使うのか。
自分の仕事とどうつながるのか。

その意味が、現場にはほとんど説明されず、渡されたのは「操作マニュアル」だけでした。
現場からすると、意味も分からず、ただ、使い辛いものを押し付けられたという感覚だけが募ったのかもしれません。

これは、システムの話に限りません。
制度変更、方針の徹底、DX推進。企業では様々な取り組みが進められます。
しかし現場に届くのは、通達、メール、社内発信。
会議で説明がなされることもあります。
しかしそれは多くの場合、経営側の視点から発せられるメッセージです。
その場にいるリーダーやマネージャーたちの、いったいどれだけの人が、真に理解し、納得し、腹落ちしているのでしょうか。

そうした状態で、リーダーたちが現場にメッセージを伝えても、言葉に「熱」が宿るはずもありません。
そして経営側は思うのです。
「なぜ現場は動かないのか」「リーダーたちは、ちゃんと現場にやらせているのか?」

そもそも通達などのメッセージだけで人が動くと考えること自体、経営の驕りではないでしょうか。
人は、意味が分からないことには力を出しません。
理解し、納得して初めて、前向きに取り組めるものです。

経営の役割の一つは、現場に「やらせる」ことではなく、現場が動ける状態をつくることだと私は思います。
そのためには、「なぜそれを行うのか」「会社として何を目指しているのか」「現場の仕事とどうつながるのか」など、取り組みの背景を丁寧に説明し、現場の言葉に翻訳していくプロセスが必要です。

正直、これは手間も時間もかかります。
しかし、そこにエネルギーを割くことこそ、経営の大切な役割の一つではないでしょうか。

社員を大切にするというのは、福利厚生を充実させることだけではありません。
心のある社員が、前向きな気持ちで仕事に取り組める環境をつくることだと思います。

「やらされる仕事」に、人は力を出しません。
一方で、意味が分かり、腹落ちすれば、人は驚くほど主体的に動き始めます。

経営に求められているのは、「やらせる」ことではなく、どうしたら現場が自律的に動けるのかを考えること。
その工夫を、あなたはどれだけ行っていますか。

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