「私にフィードバックは必要ありません。私が最高責任者ですから!」
かつて、上司がこういった時、誰も何も言わなくなってしまいました。
「えっとぉ。アドバイスをしようなどと誰も思っていません。フィードバックをしてはいけないのですか?」
あまりにもキッパリと言われてしまったので、さすがの私も本当はこう言いたかったのですが、口をつぐんでしまいました。
アドバイスとフィードバック。
似て非なり。全く異なるものですが、この仕事に就くまでは私も曖昧な概念しか持ち合わせておらず、アドバイスもフィードバックも立場が上の人から下の人へ行うものと、かなり間違った認識をしていました。
そもそもフィードバックとは何でしょうか?
フィードバックとは「起こった事実を伝える」ということです。
例えば、メンバーが電話でお客様にお礼を言う際に何度も頭を下げながら「ありがとうございます」と言っていた。この事実に対して、「君が何度も頭を下げながらお礼を言う姿に、とても心がこもっていると(僕は)感じたよ。」と起きた事実に対して、自分が感じた事実を述べています。
これがフィードバックです。
例えば、マネージャーがあまりにも忙しそうで新入社員の質問に対して答えてはいるけれど口調がとんがっていた。この事実に対して、「さっきのマネージャーは少しキツイ言い方で新入社員君は少し怯えているように(僕は)感じました。」と先輩社員君が言った。これも、起きた事実に対して先輩君が感じた事実を述べています。
これもフィードバックです。
「この資料はわかりやすいね」
「さっきの受け答えはとても感じよかったね」
「元気ないね」
「私には理解が難しいです」
これの感想も立派なフィードバックです。
起きた事実 & 自分が感じた事実を相手に伝えることがフィードバックなのです。
一方、アドバイスとは何か?
アドバイスとは、その起こった事実&感じた事実に対して、「更に良くなるように」「更に良い結果に繋がるように」情報提供することです。
「君が何度も頭を下げながらお礼を言う姿に、とても心がこもっていると(僕は)感じたよ。敬語の使い方がもっと上手くなると、お客様の印象もますます良くなるかもしれないね。」
「さっきのマネージャーは少しキツイ言い方で新入社員君は少し怯えているように(僕は)感じました。マネージャーはとても忙しそうで毎日遅いですが、たまには早く帰って休んでください。」
青字のフィードバックに赤字のアドバイスが加わるとこんな風になります。
つまり!
フィードバックであろうとアドバイスとであろうと、立場の違いに関係なく、本来は誰からでも受けることができるものだし、誰にでも行うことができるものなのです。伝え方さえ間違えなければ。
私自身、フィードバックとアドバイスについてちゃんと理解していない時には、メンバーにもよろしくない伝え方をしていましたし、自分がフィードバックを受けることも好みませんでした。
しかし、この違いをちゃんと理解した後は、フィードバックを受けるということは、自分の視点とは異なる客観的事実を知るのにとても良い方法だと思えるようになりました。
メンバーには「さっきの説明どうだった?フィードバックちょうだい。」「今日のパフォーマンスどうだった?フィードバックちょうだい。」
お客様にも「オブザーブなさってのフィードバックをいただけますでしょうか。」「提出済みご報告書に対してのフィードバックをお願いいたします。」
どんどんフィードバックを周囲にお願いするようになりました。
フィードバックは良い・悪いの評価ではなく、起こった事柄に対しての事実や客観的感想だと分かっていれば、伝え方も間違えることなく、その結果、相手もこちらの言葉を受け入れやすくなります。また、どんどんフィードバックを受けることにより、何よりメンバーに自らのフィードバックを求めることにより、メンバーの受け止め方や考えもよりわかるし、メンバーとの距離がどんどん近くなってくるように思います。
人はついつい自分の視点だけで物事を見がちですが、周囲からのフィードバックをもらうことで、自分以外の第三者の視点を知ることができ、より広く物事を捉えることができるのです。
マネージャーにメンバーからのフィードバックだなんてあり得ない! と思っているあなた。それは大きな間違いです。
どんどんメンバーからフィードバックをもらいましょう。きっとあなたの視野はもっと広くなるに違いありません。