金融機関と一口に言ってもいろいろあります。
銀行、信金、JA、生保、損保、証券、信託 etc.
「お客様のために私たちはお金のプロとして」云々かんぬん と謳い文句はこれまで散々聞いてきましたし、実際、私が組織改革やリーダー研修などのお手伝いをしたことがある金融機関で働いている皆さんにも、「なぜこの仕事をしているのか」「何のためにしているのか」その使命感が一番大切なんだと何度となく説いてきました。
ただ、ITが進んだせいで人と人との接点が少なくなっているせいもあり、金融機関の方に私自身がお客様として心震えるような対応をしていただく機会がなかったため、扱っている商品が「お金」という固いイメージも手伝って、何かどこかでしっくりこないところがあったのです。
「金融機関はやっぱり私たちサービス業とは違う。究極のところは冷たい感じがする。」
そんな偏見にも似た考えがあったのです。
ところがつい先日、本当に心が震えた、涙が出るほどの感動体験を味わう事ができました。
きっかけは、昨年末、地域営業で弊社を訪れたAさんの名刺をたまたま手にしたことです。Aさんが弊社に来た時には私は不在だったため、スタッフが名刺だけをお預かりしていました。明らかに営業挨拶だと分かっていましたが、こんな小さな会社をわざわざ訪ねてくれたことへの感謝をと思い、報告を受けてから、Aさんと、Aさんと同行していた上司のBさんにお礼のFAXをその晩お送りしました。
年明け後、再度、ご訪問いただいたようでしたがまたしても私は不在。
「ああ、また来てくれたのか。でも、お願いすることは特にないし。」そんな風に思っていました。
ところが今年2月になって風向きが変わったのです。
これでも私も経営者の端くれです。お金について相談したいことが出てきたのです。税理士やCPAではなく、金融機関のお金のプロの意見が聞きたい。そう考えたのです。
でも、こんな小さな会社の経営者の話を年度末のこの忙しい時に真剣に聞いてくれるところがあるだろうか。
一瞬、二の足を踏みました。しかしその時、あの名刺を思い出したのです。
そうだ!AさんかBさんに相談してみよう。当たって砕けろ。ダメもとだわ。
そう思い、思い切って電話の受話器を上げました。驚いたことに、Aさんは弊社の場所や周辺の事を覚えてくれていました。
その後、AさんもBさんも、まるで私とはずっと前から知り合いだったように、おまけに私専任の担当さんであるかのように、誠心誠意、真心を持って対応してくれました。
これでも人見知りな私ですが、不思議とAさんにもBさんにも最初から心を開くことができ、正直に何でも話すことができました。良いことも、格好が悪い恥ずかしいことも、夢見物語の壮大な将来の話も、過去の消してしまいたいような情けない話も。
素晴らしいのはAさん、Bさんだけではないのです。何度か店舗へ伺いましたが、皆さんいつも心からの笑顔と真心で接してくださいます。
そこには金融機関と言うどこか固いイメージではなく、人と人とが心のふれあう場所とでも言うのでしょうか。柔らかくて温かな空気で包まれている感じがするのです。
お金のプロの集団でも、春の陽だまりのようなこんなにも柔らかくて暖かい空気を作り出すことができるんだ。
彼らの笑顔とプロとしての仕事ぶりに、私はすっかり引き込まれてしまいました。
すると仕事のムシがうずうずと顔を出し始め、「どうして彼らはこうなのかな?」と探りたくなってきたのです。
でもその理由はすぐに分かりました。
最初は見逃してしまっていたのですが、彼らの名刺にはこんな素晴らしい言葉が刻まれているのです。
喜ばれることに喜びを
彼らはまさにこれを体現しているに他ないのです。
お客様の喜びが私たちの喜び。仲間の喜びが自分の喜び。
そんな思いが全員に浸透しているからこそ、あの陽だまりのような店舗が実現しているのだと分かりました。
喜ばれることに喜びを
素晴らしい言葉ですね。私の「お金のプロ」に対するイメージを一掃してくれた本当に素敵なフレーズです。
そして、それを見事に実践している皆さんも本当に素晴らしい!
今回大変お世話になったAさん、Bさん、お店の皆さんですが、別の機会には、どうやったらこんな店づくりができるのかを是非インタビューさせていただいきたいと願っています。
こんな風に温かな金融機関が街にたくさん溢れたら、きっともっと世の中、明るく暮らしやすくなるんじゃないかな。
そんな風に心から思える素晴らしい体験をさせていただきました。ありがとうございました!