マネジメント・リーダーシップ誰だって変わることができる

「了解です!」が注意できないマネージャー

「あいつ、俺に『了解です!』って言うんだよな。」
かつての同僚Kさんが口先をとがらせて思いっきり不満そうに私に訴えました。

「ふ~ぅん。いやなの?」
無関心を装ってわざと冷たく言う私に、彼はそのまま続けました。

「だってさぁ。俺、上司だぜ。あいつの。普通、上司に『了解です』はないだろう。常識ないんだよな。あいつだけじゃなく、Nも言うし、Sも真似して言うし。」

「Kさんのメンバー、みんな常識ないんだぁ。それって、Kさんが「了解!」って彼らにいつも言ってるから、真似してるんじゃないの?」

「俺はいいんだよ。上司なんだから、あいつらより立場が上なんだから。」

「そんなに嫌なんだったら、注意すればいいじゃない。『上司の俺に【了解】と言うな』って。私に愚痴らなくってもいいんじゃないの。」

「俺が言ったら、なんか、俺がちっちゃいヤツみたいじゃないか。そんなこと気にしてるって。そうな風に思われるの、嫌なんだよな。」

全くもう、何をぶちぶち愚痴っているのだと呆れながらも、少し意地悪したくなってしまいました。

「だってさぁ、注意もしない、でも嫌だ、だから私に愚痴って、あわよくば彼らを知っている私から言ってもらおうって思ってるんでしょ? 実際に、ちっちゃいヤツじゃない。Kさんは。」

私の超ドストレートな言葉に黙ってしまったKさん。
仕方がないので彼のモヤモヤを取り払ってあげることにしました。

「メンバーのみんなが『了解』と言うのは、Kさんを上司として見ていない、尊敬されていいないんじゃないかと思ってるの?」

「いや、そんなことはないと思う。俺の真似してるだけか、使い方を知らないんだと思う。」

「じゃあ、Kさんが軽んじられているわけじゃないんだよね。よかったじゃない。でも、『了解』と言われるのはイヤなんだよね。で、自分が直接言うのもちっちゃいヤツと思われるから気がひけると。」

「うん・・・・」

「自分が『俺はちっちゃいヤツかも・・・』とか『ちっちゃいと思われたくない』と潜在意識の中にあるからそれがネックになっちゃうんだろうと思うけど。私だったら、そんなこと気にしてないから普通に一般論として話すけど。まあ、私のことは良しとして。彼らは、Kさんにだけ『了解』と言うの?ほかの人にはどう?」

「他にも誰にでも言ってる。同僚、後輩にも。」

「関係先やお客様はどう? 仕事関係以外の人たちには? 目上の方とか?」

「ああ。言ってる言ってる。誰にでも言ってる。」

「そう。お客様や目上の人にも言ってるのね。それはもう、単純に知らないんだね。」

「そうなんだよ。ホント、最近のヤツらは常識ないっていうか、言葉遣い知らないんだよな。」

「そうかもしれないね。で、それを分かっていて放置しているマネージャーのKさんってどうなの?私なんか新入社員の時、先輩から口うるさく言葉づかいを注意されて、うるさいなと思いながらも、そうして覚えてきたけどね。子供のお行儀が悪いのは親のしつけの問題が大きいと思うけど、メンバーのお行儀が悪い(言葉遣いが不適切)のを放置しているのはマネージャーの仕事を放棄しているってことじゃないの?第一、何よりもお客様を大切にしているKさんなのに、肝心なところでお客様に対して失礼なことしちゃってるんじゃないの?」

ここまで言うと、Kさんも私が何を言いたいかはわかったようです。

「そうだよな。俺が言われたくないとか、俺に対して失礼だとか、俺がちっちゃいと思われたくないとか、自分中心にしか考えてなかったな。あいつらの成長とか育成とか、何よりお客様のこととか完全に抜けてた。ジコチューだったよ。
ありがとう。ちゃんと自分で言うよ。」

「そう。良かった。ふぁいとぁ!」

全く手間のかかる元同僚です。
しかし、意外にもこういう人は多いのです。バリバリの営業マンだけど実は気が小さいとか、本当は自信がないけどそれを隠すためにいつも肩で風を切るように歩いて堂々と見せているとか、人にどう思われているか見られているかが気になって仕方がないとか。そういうタイプの人は、こんな愚痴とも相談ともつかない話をなさいます。

自分が嫌なら嫌だとしっかり伝える術を持てるのがベストです。
しかしそれが、個人的感情の問題だけなのか、周囲にも影響を与える事柄なのかによっては伝え方も変わってくるでしょう。
少なくとも絶対に避けたいのは、「嫌われたくないから」「ちっちゃいヤツと思われたくないから」など自分勝手な都合で、本当は伝えなければいけないことに口をつぐんでしまい、一人イライラを募らせることです。

ちなみに。
「了解です」は軍隊や警察などでは上官に対して普通に使われている言葉ですし、目上の人に対して使うべきではないというハッキリとしたきまりはありません。
しかし慣例としてビジネスの世界では、上司やお客様、目上の方には使用せず、「承知いたしました」「かしこまりました」「承りました」などと言うのが良いとされています。

私は、自分のメンバーには「わかりました」でいいよ~ と言っています。ただ、お客様には「承知いたしました」と丁寧に思いを乗せて言ってほしいと伝えています。
日本語は難しいので、丁寧語、尊敬語、謙譲語など、使い間違えることも度々あるかもしれません。
もちろん正しい日本語を使えることは良いことですが、一番大切なことは、表面的な言い回しよりも、思いを言葉に乗せて伝えることだと思っています。

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