誰だって変わることができる

哀しみ色は伝染する

全てにおいて悲観的に物事を捉える人はいるものです。

どうせ自分なんか・・・
せっかく手伝ってもらっても、私では難しい・・・
資格を取ってもうまく活かせる自信ないし・・・

本当にもう、聞いているこちらまでもが暗~い気分に落ち込みそうになるくらいに悲観的、否定的なのです。

つい先日も、「どうやったらここまで全てをマイナスに捉えることができるのかしら・・・」と不思議に思うほどに悲観的に物事を捉えるSさんに出会いました。
以前の私だったら、「つべこべ言わずにやることやりなよ!」と、半ば切れ気味に(いえ、もうほとんど切れた状態で)冷たく言い放つことでしょう。
しかしそこは、少しは成長したであろう私自身の自分試しと思い、まずはじっくりと、その「悲観的な話」を聞いてみました。

本当は頑張れるものなら頑張りたいのだけど、どうしても過去の〇〇が邪魔をする。
自分のことはもう、ほっといてほしい。気を遣われれば遣われるほどにプレッシャーが押し寄せてきて気持ちがどんど萎えてくる。
昔はこんなじゃなかったのに、あの時もっと〇〇していれば、きっと今は別の自分でいられたはずなのに、本当に残念で仕方ない。

次から次へと出てくるマイナス話。
一切口を挟まず、とにかく最後まで聴き切りました。相手の気持ちになって。相手の感情に寄り添って。

私に何かコメントを求めるようにこちらをじっと見つめるSさん。
きっと彼は、私から出てくる言葉は励ましなのか、同情なのか、どちらかは分からないけれども、これまで何度も他の人から聞いたことがあるであろう似たような言葉が発せられると思っていたようです。

しかし、私が彼に言った言葉はこうでした。
「Sさんのお話聞いていて、とても悲しく、苦しくなりました。」

「え? 僕は尾藤さんのことを言ったんじゃなくて自分について言ったんですけど。」
戸惑うSさんですが、私は本当にすっかり辛く苦しい気持ちになってしまっており、その事について正直にSさんに話をしました。

あまりにも悲観的なため、最初は半ば呆れながら聞いていたこと。
際限なく次から次へと出てくるSさんの悲観的、否定的な話を聞いているうちに、部屋の空気がどんより曇り空から雨雲に変わり、話を聞いている間、自分が冷たい雨にずっと打たれているような気持ちになった。
Sさん自身、きっと苦しくて辛いと思うが、Sさんの話を聞いている私もおそらくSさんと同じくらいに辛い気持ちになってきて、今は本当に悲しく苦しいと感じている。
多分、私以外の他の人たちも、Sさんのお話を真剣に聞いた人たちは同じような気持ちになっていたのではないかと思う。
だから、Sさんの周りから人が離れていくようにSさんが感じるのは、Sさんがダメだからとか、嫌いだからとかではなく、Sさんのお話を聞くことで、その人自身が苦しくなってしまい、そこから逃げ出したかったのではないかと思う。

私が感じたことや思ったことをSさんに話すと、とても驚いた様子でSさんは私の話に聞き入っていました。
自分の辛さや苦しさを聞いてほしくて発した言葉が、相手をも苦しめていたとは露ほどにも思っていなかったSさん。
とても衝撃を受けたようで、暫くは沈黙が続きました。

Sさんの苦しい気持ち、悲しい気持ち、なぜ悲観的に物事を捉えるようになってしまったのか、よく分かりました。
本当に大変な経験、お辛い事だったと思います。
ただ、空気は良い空気も悪い空気も伝染する。
笑顔は伝染するけど、怒りや悲しみも伝染する。
それは言葉を発していなくとも、空気から伝わるんです。
私はそう思います。

誰だって、暗く沈んだ雰囲気の中にいるよりも、明るく大らかで朗らかな雰囲気の中にいたいと思うでしょう。
そう考えれば、怒りや悲しみ、イライラのオーラや言葉が出ている人の周囲には人は寄り付きたくないものです。
できることなら、ハッピーオーラ満載の人の近くにいて、自分もそのおこぼれを預かりたいと思うのは人情ですよね。

私はSさんにあーしろ、こーしろと言うつもりはありません。
ただ、お話を伺っている間、Sさんから発せられた哀しみのオーラはとても強く、私はここにいることが苦しいほどでした。
ご自身が今、そういうオーラに包まれてしまっている、そういうオーラを発してしまっている、ということはお伝えさせてください。
そしてその空気は周囲にも伝染してしまっているという事を。
今後、Sさんが自分の色を哀しみ色のままで過ごすのか、別の色に変えていくのか、それはSさんにお任せしたいと思います。

喜怒哀楽 
人の感情は良くも悪くも周囲に伝染するのです。
自分がどんな空気感を発しているのか、汚染の源になっていないかは、常に自覚しておきたいところです。

自分が哀しみ色に染まっている自覚はあっても、周囲の人にまでその影響を与えていたことを知ったSさんは、暫くして、そこから脱出したいので手伝ってほしいと連絡をくださいました。
そう決意できたことで、既にSさんの変化は始まっています。
哀しみ色から明るく元気なSさん色に変われるよう、精一杯のお手伝いをしたいと思っています。

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