休日の百貨店。
ブラっと立ち寄った呉服売り場で素敵な夏の大島紬を見つけました。
素敵だなぁ。でも、私にはちょっと似合わないかなぁ。手持ちの帯とも会わないしなぁ。
そんなことを思いながら反物を眺めていると、ベテランと思しき店員さんがやってきて、これはとても貴重な反物だと詳しく説明してくれました。それに合わせて見繕ってくれた帯もとても素敵。
粋な着物コーディネートの出来上がりです。
しかし、私には合わない気がするんだけどなぁ・・・
躊躇している私に、合わせてみたらと強く勧められ、半襟をつけて羽織ってみました。
イメージとしては女優の木の実ナナさんが粋に着こなす上質のお洒落着物と言った感じですが、私が羽織るとどうにもこうにもしっくりきません。
お断りしようと思ったところに、その店員さんが先に言葉を発しました。
「今までははんなり系が多かったでしょうが、やっぱり着物はこれくらい遊ばないとだめですよ。これが似合います。これになさってはどうですか。」
「どうですか」と言いながらもその強い口調は「これにしなさい」と命令しているように私には聞こえました。
決してお安い買いち物ではありません。しかも、たまたま立ち寄った売り場です。
「今月は散在しちゃってお金ないの。」と言い訳をしてようやく売り場を去りました。
気を取り直して婦人服売り場へ行くと、先日、あれこれ試着しながらも結局何も購入せずに帰ってしまったブランドの売り場に、その時の店員さんがいました。
「こんにちは。先日はごめんなさいね。」
と言うと、彼女は笑顔で言いました。
「どうかお気になさらないでください。私たちの仕事は、お客様のペースで気持ちよくお買い物していただくことですから。」
彼女のその言葉にホッとした思いがしました。
「今日はたまたま立ち寄っただけだから、ちょっと見させてくださいね。」
私が言うと、「どうぞごゆっくりご覧ください。」と彼女は言い、他の店員さんにも何らかの指示をしたようで、私はかなりゆっくりと自由に商品を手に取りながら、楽しみながら夏の新作を見ることができました。
私が声をかけた店員さんにはお得意様がついているようで、私が売り場で商品を眺めていたその時間に、3人のご婦人方が彼女を指名してお買い物をしていきました。
どのお客様も、彼女との会話を楽しみながら笑顔でお買い物を楽しんでいるのがよく分かります。
商品を買い求めるのと同時に、その店員さんとのお洋服を通してのお喋りの時間を満喫しているように思えました。
何となく売り場をブラブラしていた私ですが、結局、そのブランドでTシャツ、スカート、ジャケットと一揃いのお買い物をしていました。
なぜって、彼女が言うように、私は自分のペースで商品を選び、プロの適切なアドバイスとサポートをもらい、本当に気持ちの良いお買い物をすることができたため、全くその気はなかったのに、ついついお財布の紐が緩んでしまったのでした。
別れ際にもらった彼女の名刺にはこんな言葉が書かれていました。
「すべてはお客様のために All for Coustomers 」
それは丁寧に作られた商品にだけ言えることではなく、最終ラインで販売をしている店員さんにもしっかりと根付いているそのブランドのコンセプトでした。
本当に気持ちよくお買い物ができました。
彼女がいるショップならまた行こうと思えます。私にとって彼女の笑顔と接客は、季節ごとの商品案内のダイレクトメールよりも遥かに魅力的なそのブランドのアピールポイントです。
店頭の店員さんこそが最強の営業マンだということです。
亀田さん 今日はとても気持ちよく良いお買い物ができました。どうもありがとう!!