「良い事も悪い事も、フィードバックをお願いします!」
1.5日のリーダー研修終了後、片付けをしていた私のもとに歩み寄ってそう言ってきたのは受講生の中でも良い意味で印象的だったSさんでした。
ロールプレイなどを行うスキル研修ではないのに自らフィードバックを求める受講生は実に珍しいことです。
プログラムの後半は少人数に分かれてのグループセッションでしたが、私はSさんのチームを担当していなかったので、それ以前の大人数でのワークショップでの印象と、グループセッションにおいては表面的なことしかわかりません。
貪欲にフィードバックを求めてくるSさんだけに、軽率なことは言えません。
「ごめんね。チーム担当じゃなかったからフィードバックはできない。」
私がそう言うと、少し残念そうに、しかし仕方ないなという表情で
「そうですか、やっぱり。わかりました。」
とSさんは答えてくれました。
そんな彼に、私は一つだけ伝えました。
「今、30歳だよね。これから年齢を重ねて経験も積んで、成果を上げて、役職になるにつれて、フィードバックをもらうのが億劫になったり怖くなったりするかもしれない。他者に貪欲にフィードバックを求め、自分の成長の種にしようとするその姿勢。そのまんまでこれからも行けばいいと思う。他のことは分からないけど、そのスタンスがあるだけでも十分だと思うよ。上になればなるほど、誰も何も言ってくれなくなる。だからこそ、自分からフィードバックを求める姿勢は本当に素晴らしいし、今、既にそれができているSさんには、これからもそのスタンスを忘れずにいてもらえると嬉しいな。
近い将来、管理職研修で会おうね。」
奇しくもその夜、体操の内村航平選手が、忌憚ない意見を言ってくれる選手時代には目立った実績のなかった年下のコーチを自らのコーチとして選んだという話をテレビで目にしました。
「大人になると誰も注意してくれなくなりますからね。」
内村選手は東京オリンピック出場への望みをかけて、そのコーチを自ら選んだようです。
「耳の痛い事を言ってくれる相手を自分で選ぶ。それが内村選手の強さなのかもしれませんね。」
テレビのアナウンサーがそんなコメントをしていました。
フィードバックは耳に心地良い事ばかりとは限りません。
ガックシとしてしまうようなこともあるかもしれません。
それでも自ら進んでそれを求める。
それこそが成長への必要条件だと思うのです。
いくつになってもSさんや内村選手のように、謙虚に、そして貪欲に、自らへのフィードバックを求める姿勢を忘れずにいたいものです。