マネジメント・リーダーシップ誰だって変わることができる

災い転じて福となす

Oさんに暴言を吐いたことで、逆にOさんとしっかりと向き合う事になったマネージャーのKさん。
(ここまでのお話は昨日のブログをご覧くださいね。)

Oさんにチームから出ていってほしいと本当に願っているのかと、かなり意地悪に詰め寄った私にKさんは口ごもっていました。
本当に嫌なら「Yes」と即答するはず。
にもかかわらず、YesともNoとも言わないKさんには、Oさんに対する思いが何かあるのではないかと思ったのです。

「Oさんは私が新入社員の時に一番お世話になった、色々と教えてもらった先輩なんです。だから、今のOさんが不甲斐ないのが情けないというか、腹が立つというか・・」

ここで私はまたしても意地悪な質問をしてみました。

「その腹が立つというのは、Oさんが不甲斐ないと、そんな不甲斐ないOさんをKさんは頼りにして教わったりしていたKさんの評判が落ちるから?あんな人頼りにしてたなんてKさんも大したことないね、みたいな。それとも、そんな頼りにしていたOさんが全く違うようになってしまって、もっとできるんじゃないかとじれったい気持ちがあるから?」

するとKさんは少し怒ったように言い返してきました。
「私の評判とか、そういうのじゃありません! Oさんには若い頃は本当にお世話になりました。いつも声をかけてもらって、新入社員の時、ミスだらけの私を励ましてくれました。あの頃のOさんは本当に尊敬できる大好きな先輩だったんです。ところが今は、見る影もない。あのOさんはどこ行っちゃったんだと思ったら腹立たしいんです。なんでもっと前向きにやらないのかと思うんです。」

「Oさんは仕事サボってるの?前向きじゃないの?」

「いえ、サボってるわけじゃなくて。前向きじゃないというのは違いますね。ただ、昔みたいに一生懸命じゃないように思うんです。」

「一生懸命じゃないって、どうしてそう思うの?」

「どうしてと言われても、そう感じるから。なんかこう、余計な事ばっかりするし。」

「新入社員の時のKさんと今のKさんは当然違うよね。今の方が仕事のスキルもうんと伸びてるし成長している。Oさんは変わっていなくてKさんのOさんへの見方が変わったという事はないの?」

「・・・・。」

「Kさんがマネージャーになった時、Oさんはどんな風だった?」

「すごく喜んでくれました。自分のことのように。本当に嬉しそうに。お祝いしてくれました。食事ご馳走するって。」

「そっか。良い人だね。Oさんは。後輩に追い越されちゃったのにそんな風に喜んでくれてお祝いもしてくれるだなんて。」

「そうなんです。本当に人がいいんですよ。昔っから。人が良すぎて困るくらいに。」

「今はどう?今のOさんも良い人?」

「・・・・。最近、そういう風にOさんを見ていませんでした。ミスとか成績が気になって。チーム最年長だけどゴミ箱のゴミ捨てとか、キャビネットの整理とか黙ってやってくれています。コピー機周辺の散らかっているのの跡片付けとか。」

「そっかぁ。周囲への気配りができるんだね。今も変わらず良い人だね。」

「やっぱり、私のOさんを見る目が変わったのかなぁ・・・・」

「それは私にはわかんない。ただ、Kさんの昇進をおそらく心から喜んでくれたOさんが、Kさんの足をわざと引っ張るようなことをする訳ないと思うんだよね。むしろ逆かと。それが空回りしているか、真実は分からないけどね。けど、Kさんの役に立ちたいとか、Kさんを支えたいとか、Oさんなりに思っているんじゃないのかなと私は思った。Kさんが今気になるのは『結果』『成果』でしょ?新人マネージャーだから余計にそうだよね。チームの成果は当然気になる。でもね、そうじゃなくて、そこに至るまでのOさんの考え方や行動、チームのみんなとの接し方とか、そう言うところをもう少し見てみたら。だってね、これまで聞いた昔のOさんの話、Kさんの口から聞こえてくるのはOさんの成績じゃなくて、Oさんがどんなに素敵な人柄なのか、信頼できる心優しく誠実で嘘のない人なのか、そういう人間性をKさんは好きだったと言っているように私には聞こえたから。」

「・・・。やっぱり、尾藤さんが言うように、私の見方が変わったのかもしれません。Oさんとちゃんと話をしてみます。その前に、酷いことを言ったこともちゃんと謝ります。」

「何かが変わると良いね。」

そうしてKさんはOさんへ自分の暴言を謝り、
新人の頃からOさんが大好きだったこと
最近は少し残念に思っていたこと
しかしそれは、自分の見方がいつの間にか「業績重視」になってしまっている結果だと気がついたこと
Oさんは何にも変わっていなくて、だから、昔のように自分を精神的に支えてほしいと思っていること
を正直に話しました。

Oさんはその話を聞いて、何か言葉を発することはなかったそうです。ただ、涙が溢れてしまい、黙ってうなずいていたようです。

成績と言う点では、これまでもいまひとつの結果しか残してこれなかったOさんですが、人柄は抜群。チームのみんなからも慕われています。
オマケにKさんから頼りにされたことで、Oさんの心に火が付いたようです。
何とか結果を残そうと、暴走するのではなくKさんに教えを請いながら今までにはない頑張りを見せているようです。

実務面ではKさんがOさんを。精神面ではOさんがKさんを支えている。
二人の関係はいがみ合う仲からとても素敵な関係に変わりつつあるようです。

KさんもOさんも、「災い転じて福となす」ではありませんが、心を開いて話ができた結果ではないかと思っています。
良かったね、Kさん。
これからも頑張って!

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