マネジメント・リーダーシップ組織開発

セクハラルールは必要ない

セクハラ問題が公に頻発している昨今、世の多くの男性たちからは「ルール化したものがあるとありがたい」という戸惑いの声が多く聞かれるとのニュースを見ました。

「うっそぉ~~~。何言ってんの~~~。」
と思っているところに、ゲスト出演していた女性が「それもアリですね」というコメントを発したので、ますます「うっそぉ~~~」
と思ってしまいました。

セクハラに限らず、パワハラ、スメハラ、マタハラなどハラスメントにはたくさんのものがあります。
年齢、性別、雇用形態、障害、性的志向、道徳観や価値観念、国籍、人種、宗教など、多くの事柄がハラスメントの対象となり得ます。

そもそも、ハラスメントとは何でしょう?
日本語に直せば「嫌がらせ」
「お友達が嫌がるようなことをしちゃぁダメよ。」と小さな子供に言って教える、あの「嫌がらせ」です。
ルールとかそういう小難しいことではなく、「人として当たり前」のことなのです。

しかるに、なぜ大人になると「嫌がらせ=ハラスメント」をしてしまうのでしょう?
ハラスメント加害者の多くは無自覚だそうです。
大人社会は複雑だからルールが必要なのでしょうか?

私がメンバーから「尾藤さん、パワハラ上司になってますよ。」とストレートに指摘された時、「必死でこっちは指導しているのに、マネージャーの気持ちも知らないで、外野は全くうるさいな」と思ったりしていました。私は私なりに一生懸命だったのですが、それを受け取る側のメンバーの気持ちにまでは配慮がいたっていなかったと気が付いたのは、ずっと後になってからでした。厳しく指導されていたメンバーだけでなく、周囲でそれを見ていた他のメンバーたちにもかなりの緊張が走っていたようで、間接的ハラスメントも無意識に行っていた事を自覚した時には、こちらに悪気はないものの、ひどく落ち込み、とても反省したことを覚えています。
先日、「大人」の飲み会に20代前半の男性Mくんが混じっていた時、人数に対して場所が狭かったため、Mくんの座る場所がなかったのですが、私より少し年上の女性Sさんが「Mくん、私の膝の上にお座り~」と笑顔で言い、それを他の男性達が煽りました。Mくんは真っ赤になり下を向いてしまいました。
「それ、セクハラですよ~。Mくん、困ってますよ~」と私が言うと、Sさんも他の男性陣も真顔で驚き、「え?これ、ダメなの????」とおっしゃったのです。Sさんは全く悪気のない発言だったのですが、言われたMくんは答えに窮してドギマギしてしまったのでした。

悲しいかな、人間は「自分中心」で物事を考えがちです。
ですから、「相手がどう感じるか」というところをついつい忘れてしまい、「自分はOK」であれば問題ないと考えてしまうのです。
これがハラスメントにおいては何よりも曲者なのです。

ハラスメントとは、「相手の意に反し、相手が不快に感じる言葉や行動」であり、それらはNGなのです。
従って、マネージャーの思いがどんなに強くても、それが指導の域を超えて一方的な押し付けになりメンバー側が恐怖を感じてしまうような威圧的言動になっていたらNGですし、こちらは冗談のつもりでも相手が不快な気持ちになるような言葉はたとえお酒の席であったとしてもNGなのです。

「え~。面倒くさい! そんなこと言ってたら、いちいち相手のご機嫌伺いしなきゃいけなくって、何にもできない!」
そんな声が聞こえてきそうです。
私もかつてはそう思っていました。

そんな時はこう考えてみてはどうでしょうか。
あなたはその言動と全く同じことを、あなたが大切に思っている人(両親や兄弟、自分の子どもや孫、恋人、友人など)にも全く平然と行うことができますか? あなたが逆のそれをされる立場だったらどう感じますか?
兄にはできるけど娘にはできないなどの場合、その理由は何ですか?
長女には言えるけど、次女には言えないなどの場合はありますか?

ポイントは、自分がどうかではなく「相手がどう感じるか」なのです。
同じことを言ったとしても、AさんはOKだけどBさんは嫌がるという場合があります。逆に、あなたが同じことを言われたりされたりした場合でも、CさんからはOKだけど、Dさんからはイヤ!という場合もあるでしょう。その違いは何か?
それはひとえに相手との関係性にあるのではないでしょうか。
関係性が密だということは急にそうなるわけではなく、互いに相手を尊重し、大切に思い行動しているそれまでの結果があるから密な関係性が築けているのです。
そういったものがない中で、相手への配慮や思いやりのない一方的な言動は、相手が拒絶反応を示すことはあっても問題ないと受け取るかどうかは全く不明です。

つまり!
ハラスメントのルールなどなくても、自分中心の考え方を横に置き、「相手への思いやりや尊重」の気持ちがあれば、自ずと取るべき答えは見えてくるはずなのです。
何も難しいことはありません。自分が大切に思っている人、関係性を壊さずに大切にしたいと思っている人には、誰もが自然とそうした思いやりのある言動を取っているはずです。同じことを誰に対してでも行えば良いだけのことなのです。(「言うは易く行うは難し」ですけどね)

ですから私は声を大にして言いたい。
ハラスメンのルールなんて必要ない。それよりも大切なのは、自分勝手な思いを捨て去り、相手を慈しみ思いやる心を養うこと、相手を尊重する気持ちを抱くことなのです。
それは何もハラスメントを恐れてのことではなく、「人としてどれだけ相手を自分と同じくらいに尊重しているか」、その人の人としてのあり方そのものが問われているということだと思います。

最後に、10個の質問です。YesかNoかで考えてみてください。

1.身体に直接触れなければ、性的な発言をしても問題はない。
2.酒の席で冗談で言ったのであれば、多少性的な話でも問題はない。
3.セクハラの被害者は常に女性である。
4.職場外で起きたセクハラに、会社は責任を問われない。
5.メンバーに厳しい叱責を浴びせるのはメンバーの反骨精神を養うためであり、嫌がらせには当たらない。
6.マネージャーはいつも忙しそうで相談を持ち掛ける暇もないが、自分の判断でミスが起きると烈火のごとく怒られる。
7.マネージャーは「俺は女房は絶対に外に働きに出さない」と公言し、産休や育休申請をする社員には復職後のポジションは保証できないと冷たく言う。
8.終業30分前になると残業を言いつけるマネージャーだが、マネージャも会議や打ち合わせで忙しいので仕方がない。
9・夏休み期間中、マネージャーの別荘でメンバー一同家族連れでBBQパーティーをするのがチームの恒例となっており、参加を断ると「チームの輪を乱した」と後々まで言われ続ける。
10.パワハラの被害者は常にメンバー(部下)である。

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