マネジメント・リーダーシップ誰だって変わることができる

リーダーに絶対的に必要なもの

田中さんは都内の有名私大をトップクラスの成績で卒業し、世界的に有名な金融機関に就職しました。
努力家の田中さんはグングンと頭角を現し、昇進の階段を昇っていきます。いつも田中さんは自信に満ち溢れ、確実に結果を出していました。
「自分には年間1000万円の育成資金が投資されている。それに見合う成長をしなければいけないし、結果も出さなければいけない。」それが田中さんの口癖でした。 
そんな田中さんが、ある日突然、その会社を退職しました。

不思議に思った私は理由を尋ねましたが、決して口を開いてはくれませんでした。
しかし程なくして、田中さんの退職の理由が私の耳に飛び込んできました。
 
「どうも自主退職じゃないみたい。仕事はすっごいできるけど、マネージャーとしては問題だらけで、メンバーをまるで『道具』のように扱ってたみたいで、評判悪かったみたいよ。
ある日、田中さんが会社へ行ったら20人いるメンバーのうち3人しかオフィスに出勤していなかったんだって。大切なミーティングの朝になんてこと!と、田中さんは激怒したらしい。けどね、その朝、17人全員がそろって辞表を出して、あろうことか、田中さんのプロジェクトの一番のライバル会社へそろって転職したんだって。その理由がね、『田中さんの下では働けない。』だったって。
どんなに実力があっても、マネージャーとしては問題あり。大切な戦力がライバル会社にこぞって転職するだなんて、しかも、明らかに田中さんへの当てつけの辞め方。いくら実力と実績があっても、会社も田中さんの深刻な問題に気がつき、辞めてもらわざるを得なかったって。」
 
誰よりも結果を出し、会社に何百億という収益をもたらした田中さんであっても、メンバーの信頼を得られなかったばかりにその会社を追われることになった事実に、改めて、リーダーとして本当に必要なものは単に仕事ができるだけではなく、メンバーからの「人としての信頼」「人望」なのだと思い知らされました。
 
その後、田中さんは数年のアイドリング期間を経て、グルーバル金融グループのトップ3にまで返り咲くのですから、その実力は間違いなく本物なのでしょう。
その田中さんに何年かぶりに会った時、とても面白い話をしてくれました。
 
「専務とか、COOとか、所詮は肩書でしょ。けどね、『リーダー』って、自分でなろうと思ってもなれないんだよね。だってそうじゃない。リーダーって、自分でなるものじゃなくって、周囲が認めて初めてリーダーなんだよね。いい年になって、そんな当たり前のことにようやく気がついた。
今、この会社ではまだ、リーダーになれてないみたい。まだまだ肩書が先行しちゃって、心から自分をリーダーと認めてくれている人はいない気がする。まだ、人としての部分が欠けてる、ってことなんだろうね。
本当に、ポジション関係なく信頼を得る、しかもメンバーから得る、って一番難しい気がする。けど、やってかなきゃね。いくつになっても、人としての修行だよ。」

そう語ってくれた田中さんは、以前よりも笑顔が素敵なナイスミドルになっていました。
 

 

 

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