マネジメント・リーダーシップ

「どうする?」が失敗する理由|行動を変える問いかけの技術

「じゃあ、どうする?」の問いが失敗する理由


A:「ついつい、うるさく言っちゃうんですけど、それがメンバーのやる気を逆に奪ってるんですね・・・」
B:「そんな風に思っているんだね。じゃあ、明日からどうする?」
A:「うるさく言うの止めます。」

このような会話をあなたも経験したことがあるかもしれません。

一見すると、問題を認識し、改善を決意する前向きな対話に見えます。
しかし実は、このパターンではほとんどの場合、状況は変わりません。
Aさんは、翌日も口うるさく言い続けるでしょう。

なぜ、このような会話では、人の行動は変わらないのでしょうか?

このケースで、「明日からどうする?」という問いに対して返ってきたのは、「うるさく言うのを止めます」と、課題を裏返した答えです。

この課題を裏返した「止める」は、一見、行動目標のように聞こえますが、実は、その人が手に入れたい「ゴール(結果)」です。
言い換えれば「口うるさく言うのを止められた状態」、すなわち、実現したい状態であって、それを手に入れるための具体的行動ではありません。

つまり、現状が変わらないのは、意思が弱いからでも、やる気がないからでもありません。
「行動のレベル」まで落とし込めていないからなのです。

では、どうすればよいのでしょうか。

解決の鍵は、こう問うことです。

「〇〇するために(または〇〇しないために)、何をする?」

この問いが機能する理由

「〇〇のために、何をする?」

この問いは、シンプルですが強力です。
なぜなら、この問いは相手の思考を「状態(ゴール)」から「行動」へと転換させるからです。

人間の行動変容は、抽象的な決意では動きません。
「頑張ります」「気をつけます」「意識します」といった言葉では、脳は何をすればよいのか分からないのです。
だからこそ、「〇〇のために、何をする?」という問いが必要になります。

この問いが機能する理由は、以下の3つです。

① ゴールと行動を明確に分離する
「口うるさく言うのを止める」はゴール。
そのゴールを達成するために「何をするか」という行動に焦点を当てます。

② 具体的な行動を引き出す
「〇〇のために」という前置きがあることで、相手は自然と「では、そのためには何が必要か?」と考え始めます。
抽象的な決意ではなく、具体的な行動を言語化するよう思考が導かれます。

③ 実行可能性を高める
「明日、何をする?」が明確になれば、それは実行できます。
曖昧な決意ではなく、明日の行動予定として手帳に書き込めるレベルの具体性が生まれるのです。

では、実際にこの問いを使うと、これまでの抽象的な会話は、どのように変わるのでしょうか。

多様な場面での活用例

■ マネジメント場面:メンバーの育成

A:「ついつい、うるさく言っちゃうんですけど、それがメンバーのやる気を逆に奪ってるんですね・・・」
B:「そんな風に思っているんだね。じゃあ、うるさく言うのを止めるために、何をする?」
A:「そうですね・・・口出ししそうになったら、まず深呼吸して5秒待ってみます」
B:「いいね。他には?」
A:「メンバーを信じるために、彼の良いところをノートに書き出してみます。毎日3つずつ」

同じ問題認識から始まっても、問いが変わるだけで、会話は「決意表明」から「行動計画」へと変わります。

■ 戦略的意思決定場面:実行の具体化

経営会議でよくある場面です。

A:「我が社も、もっと顧客視点を重視すべきだ」
B:「その通りですね。では、どうしますか?」
A:「全部門で顧客視点を徹底します」

これでは何も変わりません。
では、こう問うたらどうでしょう。

B:「顧客視点を重視するために、具体的に何をしますか?」
A:「まず、営業の最前線から顧客のニーズや困りごとを直接吸い上げ、それを経営陣にまで見える化します。」
B:「なるほど。今まで、そういうことは、経営まで上がってきませんでしたね。他には?」
A:「経営陣が各支店を直接訪問して、社員の声を直接聞きます。その場で即断即決できることは、スピード感を持って対応していきます」

抽象的なスローガンが、実行可能な施策に変わります。

■ 対人関係場面:信頼構築

部門間の関係改善を図る場面でも有効です。

A:「営業部との関係が良くないんです。もっと協力し合わないと」
B:「そうですね。では、営業部との関係を良くするために、何をしますか?」
A:「まず今週中に、営業部長に時間をもらって、率直に話をします」
B:「具体的にどんな話を?」
A:「お互いのすれ違いやニーズを理解し合うために話し合う時間を作りたいと伝えます。そして月に1回、定例ミーティングを提案してみます」

「協力し合う」という抽象的な決意が、「今週中に営業部長に時間をもらい、さらに、営業との定期ミーティング」という具体的行動に変わりました。

より効果的な問いの設計:「する」計画の重要性

実はもう一つ、行動計画を立てる際に知っておくべき重要な原則があります。

それは、「〇〇しない」という計画よりも、「〇〇する」という計画の方が、人は取り組みやすいということです。
例えば、こんな行動計画はどうでしょうか。

「眉間に皺を寄せない」

悪くはありません。
しかし、これは実は「〇〇しない」という禁止の計画です。

人間は「〇〇しない」計画を守るには、常に忍耐が伴います。
「してしまいそうになる自分」を抑え続けなければならず、しんどさが増すのです。

では、どうすればよいか。

「〇〇しない」の代わりに「〇〇する」と考えればよいのです。

「眉間に皺を寄せない」→「笑顔で話す」
「口うるさく言わない」→「深呼吸して5秒待つ」
「避けない」→「自分から挨拶する」

このように、しない計画ではなく、する計画を考えることで、行動は格段に実行しやすくなります。
なぜなら脳は「〇〇しない」よりも「〇〇する」の方が、イメージしやすく、行動に移しやすいからです。

ですから、相手が「〇〇しないようにします」と答えたら、こう問い返してください。

「その代わりに、何をする?」

あなたの「問い」が持つ影響力

人の行動を変えるのは、アドバイスではなく、「問い」なのです。

「じゃあ、どうする?」という問いと、「〇〇するために、何をする?」という問い。

たった一言の違いです。
しかし、この一言が、相手の思考を、そして行動を、まったく異なる方向に導きます。

前者は表面的な決意で終わります。
後者は具体的な行動を生み出します。

あなたが日々、誰かに問いかけているとき、その問いは相手の未来を形作っています。

部下に問うとき。
同僚に問うとき。
上司に問うとき。
家族に問うとき。

その問いが「どうする?」で終わっているなら、相手の行動変容に大きな期待はできません。

しかし、もしあなたが「〇〇するために(または〇〇しないために)、何をする?」と問うなら、相手は具体的な行動を見つけ、一歩を踏み出すことができます。

この問いひとつで、相手の思考に具体的イメージを抱かせ、行動変容へと導くサポートができるのです。

これは、マネージャーや経営者だけの話ではなく、誰かに問いかける機会を持つすべての人にとって、有効なコミュニケーションの本質です。
私たちは皆、日々、誰かに「問いかけて」います。
その問いの質が、相手の行動を決め、関係性を決め、そして成果に大きな影響を与えているのです。

一つの「問い」から始まる変化

人が動けないのは、「状態(ゴール)」と「行動」が混同されているから。

「止める」「する」「向き合う」「重視する」「協力する」

これらはすべて、得たい「状態(結果)」です。
大切なのは、その状態を作り出すために、具体的に何をするか。

抽象から具体へ。
表面から本質へ。
決意から行動へ。

そのために必要なのが、「〇〇するために(または〇〇しないために)、何をする?」という問いです。
そして、行動計画は「〇〇しない」ではなく、「代わりに〇〇する」で設計する。

シンプルですが、この問いが持つ影響力は絶大です。

あなたの問いが、相手の行動を変え、関係性を変え、そして成果を変えていきます。

明日、誰かに問いかけるとき、この視点を思い出してください。

「じゃあ、どうする?」ではなく、
「〇〇するために、何をする?」と。

その一つの問いから、変化が始まります。

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