組織開発誰だって変わることができる

一生懸命が空回り

チームのお世話役に一生懸命で、それはまるでちびまる子ちゃんに出てくる丸尾君のようなSさん。
誰に言われるでもなく自ら率先して手を上げ、懇親会だ勉強会だレク係だと、とにかく毎回が全力投球。
幹事役を引き受けたからにはちゃんと上手くやらなければ、下見をしたり事前の打ち合わせを何度も重ねたり、果ては予行演習演習を重ねるなど準備に余念がないのですが、やればやるほどどんどんと仲間はSさんから離れていきます。
Sさんのようにあれもこれもと全てを事前に決めてがんじがらめにしなくても、もっと自由でいいのではと、同じチームのMさんと先日は衝突してしまいました。
皆のためにと自分は一生懸命にやっているだけなのに、どうしてこうなってしまうのだろうと困り切ったSさんから相談がありました。

Sさんの話を一通り聞いて、私は感想を伝えました。
「私がメンバーだったら、やっぱりイヤかも。」

きっと慰めてもらえるとほのかな期待をしていたSさんを裏切った私に対して、Sさんは恨み節をぶちまけます。
「どうしてですか?幹事役なんだからちゃんとやるのは当たり前じゃないですか!」

そこでSさんに逆質問。
「Sさんが苦手、嫌いだと感じる考え方、価値観、状態ってどういうのか、思いつく限り教えて。」

いい加減。行き当たりばったり。優柔不断。準備不足。なりゆきまかせ。他人まかせ。不安・・・

まあ、次々と出てきます。
笑ってしまうくらいに。

「じゃあ、想像でいいから衝突しちゃったMさんの好きな考え方、価値観、状態ってどういうのか教えて。」

臨機応変。柔軟性がある。チャレンジ。どんな時も楽しむ。アクティブ。ユーモアがある。ポジティブ。自由・・・

Sさんの苦手とMさんの好きをホワイトボードに書き記し、それをSさんに見てもらいました。
「これを見て、どんなこと感じる?」

「僕とMさんは逆なんですね。表現が違うだけで、価値観が逆なんだ・・・。」

「他に何か思うこととかある?」

「Mさんが『その場で決めればいいんじゃないですか?』と言った時、行き当たりばったりのいい加減で嫌だと僕は思ったけど、Mさんからしてみたら、もっと自由に楽しめばいいと思っていたのかも。僕はすべて事前にきちんと固まっていないと落ち着かなくて、幹事だからそれは当たり前だと思っていたけど、Mさんには全く違う幹事像があるのかも。」

「他には?」

「Mさんだけじゃなくて、だんだんチームのみんなが引いてきてる感じがしてたんだけど、みんな、僕の価値観がいやなのかも・・・」

「どうしてそう思うの?」

「否定されているんじゃなくて、僕が押し付けていて、みんなが引いているというか、逃げいているというか。僕は絶対に良いことだと思ってやっていたんだけど、みんなにとっては迷惑なこともあったのかも・・・。
尾藤さんもイヤだって言ったじゃないですか。何がイヤですか?」

「そうねぇ。みんなのために一生懸命なのはとてもよくわかるけど、例えば懇親会とかレクとか、そういう自由参加のモノとか本来楽しむ場であるはずのモノが、強制的だったりキッチリみたいだと疲れちゃうかな。参加しないという選択だってあるはずなのに、それが言い辛い環境に追い込まれている感じがするというか。Sさんの一生懸命を決して否定するわけではないけれども、エスカレートしちゃうとちょっと重いかな。」

「そうだ!『重い!』って言われたことあります。意味が分からなかったんだけど、そういうことだったんですね。重かったのか・・・」

「SさんにはSさんの価値観がある。MさんにはMさんの。それぞれの人に皆個別の価値観がある。それらすべてを取り入れることは難しいけど、少なくとも、自分の価値観を前面に出しすぎることによって他人の価値観を否定する形になったとしたらそれはマズイよね。匙加減は難しいだろうけど、少なくとも押し付けられている感を相手が感じているのだとしたら、いったん立ち止まって、相手の意見に耳を傾けてみる。形式だけじゃなくて、ちゃんと傾けてみることが大切なんじゃないかな。」

一生懸命な故に空回りしてしまってチームのみんなと距離ができてしまっていたSさん。
その後、メンバーのみんなに率直に質問したそうです。
「イヤだと感じたとこ、重いと感じたとこ、教えてくれるかな。僕は幹事として一生懸命やりたいんだけど、みんなに押し付けになっていたとしたらそれは本意ではないので。みんなの役に立ちたくてやっているのに、みんなに煙たがられるようじゃ困るもんね。怒らないから教えてほしいんだ。」

Sさんの率直な申し出に、チームのみんなは優しくコメントをくれたそうです。
あれやこれやと思い悩むよりも、自分にはてなマークを感じた時点でみんなに意見を素直に求めることができるSさんはさすがです。

その後は言うまでもなく、いえ、時々暴走しそうになる時もあるようですが、その都度、Mさんやメンバーから愛ある優しいダメ出しがかかり、Sさんは以前にもましてチームのお世話役に励んでいるようです。

タイトルとURLをコピーしました